日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2013.03.10

雛まつり、好評です。 

三寒四温繰り返しながら季節は動いているようですが、気温不安な今日この頃、皆さま、風邪など召されていませんか? 館周辺は木々が多く、冬から春にかけてたくさんの小鳥たちの訪問を受けます。メジロ、シジュウカラ、エナガ、ヤマガラ、ジョウビタキ、ヒヨドリ……。駐車場隣の公園でコツコツと木を叩くコゲラの姿もみかけましたし、次々に開花し始めた椿の花の蜜に惹かれて、メジロが群れを作ってやってきています。

さて、新暦の3月3日は過ぎていきましたが、本年旧暦では4月12日が桃の節句に当たります。節句を祝う風習が庶民層へと広がった江戸時代、人々は太陰暦に従って暮らしていましたから、桃や桜が咲き競う春らんまんの風の中、女性の節句として、雛まつりが行われていました。現在開催中の特別展「ひな祭り展示している江戸時代末期の浮世絵を見ると、雛飾りがなされた座敷には桃の枝が生けられ、縁の外、池のまわりに植えられた桃も桜も、まさに満開の時を迎えています。新暦で祝う今の雛まつりとは季節感に一ヶ月ほどの隔たりがあることがわかります。

『源氏十二ヶ月之内 弥生』(三代歌川豊国画/藤岡屋慶次郎発行/安政2・1855年)


さて、この浮世絵には、江戸の町家の人々が桃の節句を祝う情景がよく描き込まれています。上段に飾られているはずの古今雛や五人囃子などの姿はこの画面には描かれていませんが、下段に飾られた雛道具の様子はよくわかります。台子道具(茶の湯の道具)や貝桶(合わせ貝を収める一対の桶)、行器(食物を入れて運び一対の容器)、黒漆塗金蒔絵の懸盤(祝儀の料理を盛る椀膳揃い)、菱台(菱餅をのせた台)、三方に杯などが、緋毛氈の上、華やかに並んでいます。
◇雛飾りの前には黒漆塗金蒔絵の煙草盆、人形を囲んで着飾った女性たちの姿。そして画面の下手からは、女の子が人形を乗せたお駕籠を担いでやってきます。江戸では、元禄(1688-1704)の頃にはすでに、お駕籠に雛人形などを乗せて、贈り物を運びこむ“雛の使い(雛駕籠)”の風習がありましたが、この子はその様子を真似て見せているようです。

そのような江戸の「雛飾り」に対して、今回の特別展では京阪地方で発達した「御殿飾り」を数多く展示し、その移り変わりを総覧しています。日曜日には展示解説会を開催して、江戸(関東)と京阪(関西)の雛飾りの違い、そしてその違いから見えてくる地域性についてお話していますが、毎回、多くの皆さんが本当に熱心に聴講されます。女性陣はもちろんのこと、老若の男性陣の姿も結構多く、季節の文化としての伝統行事に対する関心の高まりを肌で感じる近年です。

展示解説会の様子

 

本来の季節感で祝うなら、桃の節句はこれからです。緋桃に杏、椿などの花々が咲き揃う玩具博物館では、ランプの家の座敷にも華やかに雛飾りを行いました。花の中の雛まつりを訪ねて、どうぞご家族お揃いでご来館下さいませ。

三春張子の田舎雛(福島県郡山市)とフキノトウ

(付記)
東日本大地震発生から2年。震災によってお亡くなりになられた方々の三回忌にあたり、心よりご冥福をお祈りいたします。被災地の皆様にはさまざまな困難の中で懸命に暮らしておられることと存じます。私どもは大して何の援けにもなれずに日常を暮らしており、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。本日、玩具博物館受付に設置しております義捐金箱を開けまして、約一年分の寄付金1万5千円を、東日本大震災文化財救援活動への寄付金として公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団へ送らせていただきましたので、ここにご報告いたします。お寄せいただきました皆さま、ありがとうございました。(3月11日)(尾崎織女)

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