日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2012.10.24

ブルキナファソの音楽家と小さな独楽 

1号館で開催中の企画展「世界の太鼓と打楽器」に関連したライブが始まりました。先週の日曜日は、ブルキナファソのミュージシャン、ベノワ=ミロゴさんとそのご友人 の左鴻昌一さん、勝間みゆきさんを迎え、<西アフリカの楽器の音色とリズム>を開催しました。秋の色と匂いが漂い始めたランプの家と中庭を舞台に、力強く、また繊細な西アフリカの音楽が響き、のべ80人を超える方々がアフリカン・ミュージックの世界を楽しんで下さいました。

ブルキナファソ(Burkina Faso)は、日本においてよく知られている国とは言い難い西アフリカの内陸部にある農業国ですが、民芸の世界では、空き缶を利用したユニークな乗り物玩具や豊かなフォルムをもつ動物の木彫、また滋味のある泥染めの布をつかった美しい衣裳で知られる造形の国です。ベノワさんのお召し物も泥染めの布から作られたもので、それはそれは素敵なデザインでした。

さて、午後からのライブでは、ベノアさんが、ジャンべ(西アフリカ各国に伝わるゴブレット型ドラム)、バラフォン(西アフリカ各国に伝わる木琴で木琴族の原型とされている楽器)、タマタマニ(トーキングドラム=言葉を伝える通信のためのドラム)、コラ(西アフリカ各国に伝わる竪琴で、竪琴族の原型とされている楽器)を次々に演奏して下さいました。
みゆきさんは、ドゥムドゥム(円筒型ドラムを大中小組み合わせたもの)で伴奏を加え、ベノワさんのフランス語(ブルキナファソの公用語はフランス語です)をわかりやすく通訳して下さいました。

また、左鴻さんは、そうした楽器と音楽を愛する西アフリカの人たちを描いた『アフリカの音』(沢田としき著/講談社刊)という絵本を朗読しながら、会場と奏者をつないで下さり、参加者は玩具博物館所蔵のでんでん太鼓やウッドブロックを手に手に、ベノワさんが奏する音楽に合わせて踊って踊って、大いに盛り上がりました。途中休憩の間に、日本人ジャンべ奏者の飛び入りがあって、ベノアさんとのご機嫌なセッションが繰り広げられる一幕もあり、主催者としては、願ってもない素晴らしい展開に感激いたしました。奏者の方々、そしてご参加くださった皆様方に心から感謝申し上げます。


玩具博物館の収蔵品の中に、ブルキナファソの木彫「ホロホロチョウ」があるのですが、前回の訪問で、ベノアさんが『世界の鳥のおもちゃ展』をご覧になられたとき、“アフリカの鳥”のコーナーに三羽のホロホロチョウをみつけて、信じられないぐらい喜んで下さいました。ライブの会場に、そのホロホロチョウたちを持ち出していたのですが、ベノワさんは、ライブが終わったあと、懐から竹笛を取り出して、ホロホロチョウたちのために“懐かしい音色を聴かせてあげる”と、しみじみとする美しいメロディーを奏でておられました。私は、その音楽とベノアさんの心情に胸を打たれました。

ブルキナファソの木彫・ホロホロチョウ

やがてお別れのとき、ライブに即興ダンスで特別参加してくれた近所の子どもたちが、去っていくベノワさんたちの車を追かけて、走って走って・・・・・・窓から手をふるベノワさんに、「らいねんも、ぜっっったいに来てな~!!!」と大声で叫んでいました。その純粋な心がつくる光景に、また胸がいっぱいになりました。たった半日で、子どもたちの心をしっかりとつかんでしまうベノワさんには何か特別な力があるように思えます。


ブルキナファソの独楽“ヌントトル”

この日に先んじて、私たちはベノアさんにひとつお願いごとをしていました。
探しても探してもアフリカ大陸には独楽がない・・・”とアフリカ専門の民芸業者さんたちは言われ、またアフリカ各地によく旅される方々に伺っても“そんなものは見たことがない”と言われます。けれど、日本の子どもたちが、誰に教えられることもなく木の実の独楽をつくるように、ブラジルの先住民たちが何代にも亘って素朴な木の実の独楽を伝えているように、植物の実や種のあるところ、子どもが存在するところ、独楽が存在しない、なんてことは考えられません。

―――そう、工房で作られるロクロびきの木地独楽をみて、“こんなのは見たことがない”と言われていたベノワさんですが、“どんぐり独楽”をみて、“あ!こういうのなら、ブルキナファソにもあります!”といわれたのです。私たちが思っていたとおりです。
ベノワさんの故郷では、子どもたちは、“タンバクンバ”という樹木の実(=グレン)を使って独楽を作るそうです。タンバクンバのグレンは平たい形をしていて、その表面を少し焼き、中心に穴をあけると、細い竹を指して軸を調整します。直径2~3cm、高さも同じくらいの小さな独楽。ベノワさんは、子どもの頃、水桶などをひっくり返し、平らな桶の底の部分でグレンの独楽を回して遊んでいたそうです。その独楽を、ボボ族の言葉で“ヌントトル”と呼ぶそうです。

ベノワさんへのお願いごとというのは、そのヌントトルを玩具博物館のために作って欲しいということでした。タマクンバのグレンは首飾りのビーズとしても使われるそうで、今回の来日に際しては、ご友人に首飾りを作るために、たくさんのグレンを故郷からもってきておられました。
上の写真が、ベノアさんが近所の子どもたちと一緒に作って下さったヌントトル。なんでもない、それは素朴過ぎるほどのものですが、アフリカ大陸にも、“子どもたちの、子どもたちによる、子どもたちのための、小さな独楽”が存在することを証明する素晴らしい資料です。ヌントトルは、11月17日から1号館で開催する企画展「日本のコマ・世界のコマ」に、さっそく展示したいと思っています。

私たちは、ヌントトルのお礼にブルキナファソの子どもたちに、日本の“どんぐりの独楽”を贈りました。たくさんの違い、それによって起こるたくさんの行き違いがあったとしても、通じ合い、分かり合えることはたくさんあります。例えば、音楽を愛する心情や子どもたちが独楽を回して遊ぶ無心の時間は、世界共通ではないかと思えるのです。(尾崎織女)

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