日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2018.11.03

文化の日を迎えてー失われ行く文化財を集めて55年

11月3日。今日は文化の日です。当地は雲ひとつない晴天です。

朝日新聞記者の斉藤良輔氏の著書「日本の郷土玩具」と出合い、郷土玩具が文化財として評価されずに失われる状況を知り、収集を始めてから55年になります。山陽電鉄の車掌勤務の傍ら全国を歩き、まもなく灘高校国語教師の橋本武先生とも出会いご指導を受けました。私の信条「人の真似をしないでわが道を行く」は先生からのお言葉です。
当時、凧の収集家は少なく、青森から九州まで全国を歩きました。大分県の豊後高田の凧屋で「イギリスの大英博物館から注文があったが国内の博物館からはない」と聞き、評価を高めるためにいつの日か展示館をとの夢を持ちました。それが実現したのが1974年です。現在地に46㎡の展示施設を造り「井上郷土玩具館」としてオープンしました。山陽電鉄の仕事は本社勤務になり、PR誌「山陽ニュース」の編集を担当していました。職場の理解もあり、二足の草鞋で頑張れました。

その後も収集を続け、資料の増加とともに増築。何人もの収集家の遺品が届き、規模内容ともに日本を代表する玩具博物館になったため、日本博物館協会とも相談して1984年に「日本玩具博物館」と改称。私は博物館活動に専念するため、45歳で会社を退職しました。そして、子どもや女性にかかわる文化遺産を守ることを信条に頑張ってきました。  
1990年には尾崎学芸員を迎え入れ、1998年には個人立では珍しく全国でも数例の博物館相当施設に認定され現在に至ります。当館には海外からの専門家も再三来館され、高い評価をいただきます。私自身、「良くぞここまで来れた」と感慨深いものがあります。励ましご支援くださった大勢の皆さまに、心から感謝を申し上げる次第です。

現在、1号館では企画展「世界の伝承玩具」を来年2月19日まで開催中です。当館が所蔵する世界各地のこま・凧・けん玉・ブン ブンゴマなどが一堂に展示されています。中でも、こまは会場の半分近くで約250点を展示し、世界各地のこまが一覧できます。当館は日本各地のこまも多数所蔵しており、世界のものと比較すると日本は、こまの世界的な宝庫であり、類のない優れたこまが多数あります。
青森県の雪の上で回すズグリこま、宮城県の棒の上でまわす皿こま、大きなこまの周囲を円盤が回る追いかけこま、東京には江戸時代から遊ばれた特色あるこまが多数あり、こまの中から円盤のこまが5個も飛び出す飛び出しこま、三段重ねで回る三段こま、などがあります。

こまの胴に紐を巻いて投げて回すこまは世界中にありますが、細い鉄心がこまの上部まで突き抜け、回転時間を競うと日本ほど回るこまは例がないと思います。こまの胴に穴が開き、回転させると音がする鳴りゴマも世界中にありますが、日本のものは美しく彩られ、よく回ります。

伊勢の鳴りごまと姫路の鉄輪ごま

当館は2号館で日本のこまのいくつかを自由に遊べるようにしています。飛び出しごま、追いかけこま、皿こま、鳴りこま、当てごまなどで人気があります。売店でもそれらのいくつかを現地から取り寄せ販売していました。しかし、追いかけこまや鳴りこまは作り手がなくなり、入手できなくなりました。中でも鳴りこまは今年、伊勢の鳴りこまと山形で作られてきた鳴りごまが作者の高齢化などで製作中止になりました。日本が世界に誇れるこまであり、本当に残念です。なんとか継承することはできないものでしょうか。

先日、姫路市シルバー人材センターから、思いがけない講演の依頼がありました。今月18日(日)に開催される第7回シルバー祭りの講演で、例年200~300人もの方が参加されます。「ミシュラン・グリーンガイド二つ星の日本玩具博物館」と題して、10時45分から1時間余り当館の現状や課題などを話します。地元でのこのような機会は初めてであり、大勢の皆さまに当館の現状などをお聞きいただければと願っています。会場は姫路市勤労市民センター(姫路市中地354)4階大会議室です。誰でも参加でき、無料です。ぜひご来場下さい。

(館長・井上重義)

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