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館長室から 2018.01.25

たばこと塩の博物館で 「ちりめん細工の今昔展」が始まりました

東京のスカイツリー近くにあるたばこと塩の博物館で、当館所蔵資料に基づく「ちりめん細工の今昔」展が23日から開催されています。その準備のため、去る19日から私と学芸担当の尾崎・井上・原田の4名が上京し、たばこと塩の博物館の学芸担当者と協力して展示作業にかかり、無事オープンしました。ところが22日の午後から、東京地方では雪が降り始め、23日朝には積雪が20cmを超える大雪になり、交通機関が不通になるなど大変な天候で、来館くださる方があるかどうか心配でした。しかし10時になるとオープンを待ちかねたかのように来館くださる方もあり、午後2時からの私の講演会「ちりめん細工(裁縫お細工物)の復興に取り組んで」(資料添付)にも50名を超える聴講者がありました。

たばこと塩の博物館でのちりめん細工展は11年ぶりの開催です。同館は2年前に現在地に新築移転され、最新の設備を持ったすばらしい展示場です。そのような会場でちりめん細工展を開催できたことを心から喜んでいます。展示は江戸時代から昭和初期までの古作品約300点と当館が復興に取り組んできてからの新作500点です。作品によっては一種類で多数展示されているものもあり、実際の展示総数は1,000点を優に超え、すばらしい作品がぎっしりと並びました。

よみがえったちりめん細工新作品が並ぶ展示室

古作のコーナーでは当館が約40年まえから蒐集に取り組んできた作品の数々が展示され、押絵やきりばめ細工やつまみ細工などの技法で作られた大小の袋物や箱もの。さまざまな花の袋や小箱、それに迷子札などが展示され、今では作る人もいない高度な制作技法で作られた数々の作品に、驚かれ、感動されると思います。展示品は購入だけでなく、大勢の皆様から寄贈いただいたものも多く、時期に恵まれて素晴らしい作品群の収集に成功しました。

古作品がテーマ別に並んでいます

新作コーナーには当館のちりめん細工研究会に集われた皆様が約30年前から作られてきた、古作の復元や創作された作品の数々がずらり並びました。これまで私の監修で16冊に上るちりめん細工の書籍が出版されましたが、掲載されたちりめん細工の作品は当館で保存しており、新作コーナーではそれらが一堂に展示されています。1,000点を超える、これほどの内容の展示は 過去にはなかったと思います。日本女性が歳月をかけて育ててきたちりめん細工のすばらしさを、ぜひ一人でも多くの方にご覧いただけることを心から願っています。

新春のちりめん細工展示コーナー

本日は、私の79歳の誕生日です。これまでを振り返ると人生の不思議を感じます。高校生時代は鳩少年で伝書鳩の飼育に熱中。山陽電鉄入社後は労働組合の青年部活動に熱をあげ、帰宅途中に社会運動の書籍を置く書店に立ち寄っていました。そこで24歳のときに手にしたのが朝日新聞記者の斉藤良輔氏が書かれた「日本の郷土玩具」(未来社)です。その本が私の人生を大きく変え、さらに収集を始めてまもなく灘高校国語教師の橋本武先生と出会い、一緒に蒐集旅行に出かけ、アドバイスを受けました。その先生の言葉「人の真似をしないこと」が私の人生観になり、当館でないと見ることができないコレクション群の形成に繋がりました。ちりめん細工の収集は1970年に神戸の古書市で明治42年刊の「裁縫おさいくもの」を入手したことがきっかけで進展し、所蔵するちりめん細工コレクションは3000点を超えます。本と人との出会いが私の人生の大きな指針になり糧になりました。

(館長・井上重義)

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