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館長室から 2016.06.21

50年の歳月をかけた、貴重な神戸人形コレクション

6月18日から6号館では特別展「神戸人形と世界のからくり人形」が始まりました。6号館の西室には世界各国から収集したからくり仕掛けの玩具400点、東室には神戸人形400点と合計800点もの作品が並び、来館者からは「すばらしい展示だ」と感動の声があがっています。とりわけ東室の神戸人形の展示は壮観で、来館者は「これほどの膨大な神戸人形を一堂に見るのは初めてです」と、驚かれています。

明治~大正時代の神戸人形

私が郷土玩具の収集を始めたのは1963年からです。そして、神戸の灘高校橋本武先生と出会い、その後、自宅にお伺いしていろいろとご指導をいただいていました。しかし神戸人形は1950年頃に作者が亡くなり廃絶。過去のものになっていました。

ところが1964年の夏に先生は、神戸人形の復活に取り組まれている方が加古川市(神戸市の西約30㌔)の鶴林寺近くに住まわれているとの情報をキャッチされ、捜して欲しいと頼まれました。まもなく数岡雅敦さんを捜しあて、先生を案内しました。先生は聞き書きを日本郷土玩具の会会報「竹とんぼ」に発表され、 神戸人形が蘇ったとして大きな反響があり、数岡さんは神戸人形作者として一躍有名になられました。ただ価格が1体8000円~8万円もする高価なものだけに、財政的にも余裕がない私は多くを収集することが出来ませんでした。

数岡さんは1989年に61歳という若さで亡くなられました。数年後、遺族から多数の作品が遺されているので引き取って欲しいと依頼があり、80体ほどを購入しました。さらに2000年にはニューヨーク在住の神戸人形収集家の遺族からも購入依頼があり、当館の友の会から支援を受けて46体を引き取りました。初代の野口百鬼堂、出崎房松や小田太四郎など、明治中期から昭和初期に作られた、神戸人形の歴史を辿る上では欠かせない貴重な資料の数々でした。その後も収集家の資料を引き取るなどして、半世紀に及ぶ歳月を経て、国内外にも例を見ない、500体を超す膨大な神戸人形コレクションが構築できたのです。

アメリカから里帰りした明治末期の神戸人形 (珍しいゼンマイ仕掛け)

百年を超える歴史を持つ神戸人形は、その動きの奇抜さやユニークさだけでなく、その造形的な面白さも特筆されるべきものです。明治末期から昭和初期にかけて作られた神戸人形は、神戸にやってきた外国人観光客から高い評価を受け、多くが海外に持ち帰られました。ところが地元には古い時代の神戸人形が遺されていないことなどもあり、神戸人形が世界に誇れるからくり人形として高い評価を受けることはありませんでした。私は橋本先生との出会いや1970年~84年まで神戸の山陽電鉄本社でPR誌を編集してきたご縁もあり、神戸が好きな街でした。いつの日か神戸人形が輝くときが来ることを夢見て50年間、神戸人形を追い求めてきたのです。

廃絶した神戸人形の復活にも取り組み、2003年には町内在住の工芸作家の協力を得て酒飲み、西瓜喰い、面冠り、釣鐘お化けの4点を復元できたのです。しかし、作者の事情で制作は2年前にストップしていました。作って下さる方を捜していたところ昨秋、神戸在住で人形劇美術の専門家の吉田太郎さんと出会い、制作を引き継いでくださることになりました。古作品の補修や新たな神戸人形の制作にも取り組まれ、神戸人形は再び蘇りました。
神戸人形は神戸が世界に誇れるユニークなからくり人形です。ぜひ、一人でも多くの神戸市民の皆様にご覧いただき、神戸人形100年の歴史と共に、世界に誇れるユニークな文化遺産であることを認識いただける場になることを切に願っています。(井上重義)

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