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blog密度の濃い特別展「中国の民間玩具」
■今年は空梅雨に終わるのかと心配していたのですが、18日から雨が続いており、梅雨らしい天候になりました。6号館の特別展「端午の節句~幕末から昭 和~」が今月11日で終了し、夕刻から撤収作業が始まりました。端午の飾りだけでなく、6号館の東室には御殿飾りがずらりと並び、その撤収もあって大変な作業になると予想していたのですが順調に進み、撤収作業は13日にほぼ終了しました。しかし、「中国の民間玩具」展の展示作業は大変でした。連日、夜遅くまで陣頭指揮をしてくれた尾崎学芸員の労に心から感謝しています。
■展示構成を練る作業も、パネルやキャプションの製作も、出品点数も多いこともあって、大変な作業でした。通常ならその週の土曜日にほぼ完了することが多いのですが、最終的に作業が終了したのは18日でした。当初予定の出展数は800点だったのですがそれも大幅に増えて、最終的には約1000点を超える資料が並びました。
■これほどの量と質の高い中国民間玩具が一同に展示されるのは、恐らく過去には例がなかったと私は思います。これまでにも東京の日中友好会館美術館で「中国民間玩具の世界展」が開催されたり、昭和初期の中国民間玩具を所蔵する国内の博物館施設でも中国の民間玩具展が開催されてきました。しかしこの度の当館の展示の大きな特徴は1920~30年代の貴重な作品と併せて、文革後の1980~90年代の作品が一同に並んだことです。なかでも1920~30年代の民間玩具は中国にも遺るものはないとされ、それが300余点も展示されています。主なのは尾崎清次氏のコレクションですが、長尾善三氏の虎コレクションにも中国の民間玩具があり、併せて展示しました。
■1980~90年代のものは、私自身も中国浙江省での民間美術学会に参加したり、北京の李寸松先生宅を訪ねるなどして収集しました。また李先生からプレゼントされた資料には第一級の貴重な資料が多数含まれています。しかし、なんといっても今回の展示の主力は、昨春寄贈を受けた伊藤三朗氏のコレクションです。中国全土から貴重な資料が集められており、観光的なものは含まれておらず、確かな鑑識眼で収集された質の高さに驚きました。また布製の玩具も多数収集され、貴重なものが沢山あります。中国各地からこれほどの量のものをどのようにして収集され持ち帰られたのか、興味津々です。7月に来館下さいますので苦労話などをぜひお聞きしたいと考えています。
■今回の展示の大きな特徴は、展示ケース内だけでなくケースの上や天井にも約40点もの凧が飾られて、6号館の部屋全体が展示室になっていることです。恐らく通常の博物館の展示を見慣れた方ならアット驚かれる手法です。6号館の展示ケースの延長は約36mありますが、そこに中国民間玩具が1章から10章までに分けて展示され、それぞれの分野ごとに展示と細やかな解説がなされています。説明も大きな字ではなく文字数も多いのですが、中国の民間玩具の世界が詳細に解説されています。説明を読み、資料を見ていけば1時間以上はかかる展示内容ですが、皆様から感動のお言葉が寄せられる展示になったと、私自身が感動しています。
■また1号館で開催中の企画展「日本と世界のままごと道具」も、このような内容の展覧会は全国でも例がなく、全国的な情報誌にも取り上げられています。来館者からも、懐かしいままごと道具や珍しいままごと道具と出会えてよかったと好評です。
■当館でないと見ることができない二つのユニークな展覧会にぜひご来館ください。
(館長・井上重義)
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