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館長室から 2013.01.29

「雛まつり~御殿飾りの世界」によせて

早春に咲く、黄色い可憐な蝋梅(ロウバイ)の花が咲きはじめました。館の入り口や館内の庭に5・6本の素心蝋梅や満月蝋梅が植わっており、椿などとあわせて、当館の38年の歴史と共に成長してきた木々のひとつです。

咲き始めたロウバイの花

先週の22日夕刻からのクリスマス展の撤収作業に続き、恒例の「雛まつり展」の準備作業に追われる毎日でした。この度も膨大な資料の撤収と展示は御殿飾りを15組も組み立てる大変な作業でしたが順調に進み、27日に完了しました。正式には2月2日がオープンですが、28日からいつものように来館された方にご覧いただいています。

今年度の雛まつり展のテーマは「御殿飾りの世界」です。当館が所蔵する50組を超える雛の御殿飾りから、江戸・明治・大正・昭和と時代を追って15組の御殿飾りを選び展示しました。京都や大阪で製作され、江戸時代末期から明治・大正・昭和と時代と共に変遷してきた御殿飾りの歴史が良く理解できると思います。とりわけ明治末期から昭和初期にかけて作られた豪勢な檜皮葺御殿の数々は贅を尽くしたものです。明治38年の日露戦争終結後から大正時代にかけての好景気の時代を反映した雛飾りといえるでしょう。当館はこの檜皮葺御殿を7組収蔵していますがその中から3組を選び展示しました。うち2組が初公開の資料です。とりわけ大正11年の丸平(大木平蔵) 製の御殿飾りは、当時小さな家が1軒買えるほどの価格だったと伝わります。

明りが灯った雪洞

今回、展示ケース内の雪洞に始めて明かりが灯りました。実は丸平製の御殿飾りに付属する雪洞には電灯がともる仕組みになっており、電気を入れると雪洞が灯りました。現在では雪洞の中に電灯をつけることは当り前のことですが、当時としては画期的なことではなかったでしょうか。展示ケース内の雪洞に明かりが灯ると、会場はこれまでとはひと味違う華やかな雰囲気に包まれました。きっと皆様からも感動のお言葉がいただけそうです。

静岡製の華やかな御殿

御殿飾りは昭和30年代に終焉を迎えましたが、その頃、御殿飾りが盛んに作られていたのは雛道具類の産地でもあった静岡地方に移っていました。しかし京都や大阪で作られた頃の御殿飾りと比べると大きく変身していました。御殿は京都御所の紫宸殿を模して作られたと伝わりますが、それが華やかな色彩と屋根にブリキ製の鯱が飾られたものになっていました。そんな御殿飾りの変遷がたどれるのも、膨大な資料を所蔵する当館だからできる展示です。

例年通り西室には、内裏雛の名品の数々も並んでいます。贅を尽くした道具類の数々も見事です。解説をたどりながら会場を一巡していただくと雛飾りを見る楽しさがさらに膨らんでくるでしょう。皆様のご来館をお待ちしています。

(館長・井上重義)

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