日本ヴォーグ社から『ちりめん細工つるし飾りの基礎』が出版されます           | 日本玩具博物館

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館長室から 2011.11.07

日本ヴォーグ社から『ちりめん細工つるし飾りの基礎』が出版されます          

日ごとに秋も深まり、当館の入り口のノジギクの花が咲き始めました。紅葉の季節はこれからですが、館内の庭のモミジも色づき始めました。

さてこの度、私が監修の初心者向けの『ちりめん細工 つるし飾りの基礎』が日本ヴォーグ社から出版の運びになり、この11日頃には全国の書店に並びます。ちりめん細工の初心者向けの入門書的な本は1998年に私の監修で婦人生活社から『やさしく作れる伝承のちりめん細工』が出版され、解りやすいと好評で版を重ねて2002年には増補版も出版されましたが、2003年に婦人生活社の倒産で絶版になりました。作る過程が写真付で解りやすく解説されているため、入門書的な役割を果たす本として人気があり、絶版後もネットオークションでは定価の倍以上で売買されていました。そのため、ちりめん細工の底辺を広げるには解り易い基礎的な本の出版が欠かせないと考えていました。

日本ヴォーグ社から出版いただけることになり、今春から当館のちりめん細工講師の方の協力を得て準備にかかっていました。当初は個々の作品の作り方を中心にした婦人生活社と同様の内容でと考えでいましたが、出版社の意向もあり、作品をつるして飾る仕方などを取り込んだ「つるし飾りの基礎」が中心の本になりました。しかし、それが正解であったと思います。ちりめん細工は個々の作品を鑑賞するだけでなく、つるして飾るのも楽しいのです。1998年に伊豆の稲取で雛祭りにちりめん細工を輪に下げて飾る「雛のつるし飾り祭り」が復活し、それが引き金にもなって各地で雛の季節にちりめん細工をつるして飾る行事が行われるようになり、それがちりめん細工のひとつの流れにもなっているからです。

これまで当館では、ちりめん細工の普及と振興のために数多くの本を出版してきました。1991年にはちりめん細工のバイブル書とも言える1909年(明治42年)刊の『裁縫おさいくもの』を自費出版。その後は出版社と作り手の方の協力を得て、1992年にマコー社から『ちりめん遊び』を出版。以来、NHK出版から『伝承の布遊び ちりめん細工』など2冊、雄鶏社からは『四季を彩るちりめん細工』など5冊、日本ヴォーグ社からは3冊と私の監修でちりめん細工に関わる本を出版し、ちりめん細工の魅力を知っていただくと共に普及に努力してきました。

しかし残念なことが起こりました。私は大勢の皆様にちりめん細工に親しんでいただくために解り易い作り方の本を出版してきたのです。それが「ちりめん細工」が知られると、私たちの本を参考に中国で作らせたものが京都などの観光地で売られるようになりました。材料は正絹の縮緬でなく化繊で出来た粗悪品です。それが安価で売られ、結構各地でみかけます。驚いたのは昨年、稲取でその中国製品が売られているのを見かけました。粗悪な中国製品が出回るにつれて、ちりめん細工が安っぽい手芸品だとの認識が広まっています。

『ちりめん細工 つるし飾りの基礎』は、AB版120頁。96頁が美しいカラーのボリュームある本なのに定価は1200円と大変お徳な値段です。粗悪な中国製品が氾濫する中で、本来のちりめん細工のすばらしさを知っていただき、日本女性が育んできた手の技や美意識のすばらしさを再認識していただく本にもなればと思います。ちりめん細工は型紙を使いますので形は同じですが、使う材料や柄、作り手の感性によって様々な楽しい作品になります。この本には26名もの方の作品が載っていますので、そのことが理解でき、感動されるのではないでしょうか。ぜひ手にとってご覧下さい。

(館長・井上重義)

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