日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2010.06.11

1号館企画展「海の乗りもの」蒐集裏話。

当館の東側は小さな水路を挟んで水田が広がりますが、去る6日に田植えが終わりました。3号館の遊びのコーナーの窓からは、田植えの終わった水田とにぎやかな蛙の合唱が聞こえてきます。田植えが終われば例年、夜になると水路に数匹の蛍が光るのですが今年も姿を見せてくれました。ちょうど1号館の入れ替えでスタッフも夜遅くまで仕事をしており、蛍の姿に感動の声が上がりました。東側は水田、館内や西側は緑に囲まれたのどかな環境に当館はあります。

時事通信社の7月初旬の原稿を7日に届け、8日夕刻から9日の休館日にかけて1号館の入れ替え作業を行いました。無事作業も終わり、1号館の企画展「海の乗りもの」が始まります。正式オープンは明日からですが、1号館は当館の受付でもあり入り口にも当たりますので展示作業が終われば来館者にご覧いただいています。
50カ国300点もの世界各地の珍しい船の玩具をご覧いただくと、良くぞこれだけのものをどのようにして蒐集できたのか疑問を持たれる方も多いと思います。いつも同じ言葉の繰り返しになりますが、蒐集にはタイミングが必要です。さらに時と人にも恵まれ、世界各地で作られた民族色豊かな船の玩具の数々が消える寸前に蒐集できたのです。

当館が世界の玩具の蒐集に取り組んだのは33年前からです。1979年の国際児童年に向けて蒐集を始めました。入手方法は私や当館のスタッフが現地で蒐集、海外の博物館との資料交換、国際見本市会場や国内の海外の民芸品を専門に扱う業者からの購入ですが、大勢の協力のお陰で貴重な資料の数々を蒐集することができました。残念なのは当館と密接な関係があり、永年蒐集にご協力いただいた業者の多くが近年廃業したり経営者が変わって、私たちが欲しい資料が入手できなくなったことです。


当館は東欧やロシア関係の千点を越える貴重な資料の数々を所蔵していますが、その多くが東京の新橋に事務所があったベリョースカ白樺経由でした。今回展示のセルギーエフとセミョーノフの船車、ドウイムコボのボートも同社からです。同社が展示用に所蔵されていた玩具や人形関係の資料も同社が解散する寸前にご連絡をいただき引き取りました。ソ連邦が健在な頃は同国や友好国の民芸品がベリョースカ白樺を総代理店として輸入されていたのです。ソ連邦解体後はウオッカが輸入できなくなり、8年ほど前に同社は解散。その後ロシア関係の資料の入手は不可能に近い状況になりました。
メキシコやペルーなどの玩具や人形などの膨大な資料を入手できたのは東京吉祥寺に事務所があったチチカカのお陰です。当館のクリスマス展で人気があるペルーの高さ80cmほどもある大型のレタブロ(箱型祭壇)も同社からでした。今回の船の展示でも、ペルーのチチカカ湖のトトラ船、メキシコのタラスコ族のカヌーなどは同社からですが、一昨年同社の設立者が退任後は取り扱い内容も変わり、横浜に移転後は当館とも取引がなくなりました。上京する度に世界の民芸品を扱う業者を訪ねていたのですが、そんな楽しみも減りました。

当館学芸員が現地採集した貴重な資料も幾つも展示しています。ブラジルのベーレーンやサルバドールの船、エジプトの漁船、ベトナム・ホアルーの竹の船など、これらは現地に行かないと入手できない貴重な資料です。国内のものも寄贈を受けた昭和初期の沖縄のヤンバル船など、数多くの貴重な資料を展示しています。

続いて7月3日から、6号館では世界各国の飛行機、汽車、自動車など空と陸の乗りもの玩具を集めた特別展が始まります。当館が長年に亘り蒐集してきた乗物の玩具を「乗りもの玩具博覧会」と題して1号館と6号館で同時に展示する催しですが、楽しく珍しい世界各国の乗りもの玩具の数々に感動されると思います。皆さまのご来館をお待ちしています。

(館長・井上重義)

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