日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2010.06.29

乗りもの玩具の大行進~展示を楽しむ~

博物館の庭では、七色の紫陽花に加えて、7月を告げる蓮(はちす)が大甕の中から蕾をのばし、夢のような色の花を咲かせ始めました。雨が降り続く季節、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。学芸室では、6月は、1号館と6号館の展示替え作業に没頭しておりましたが、ともに模様替えが完了し、展示室にも夏がやってきました。



今夏は、12年ぶりに「世界の乗りもの玩具博覧会」と題する企画・特別展を開催いたします。1号館では海の乗りもの6号館では空と陸の乗りものを地域ごと、あるいは種類ごとに展示いたしました。玩具における民族色をご覧いただくとともに、世界各地で発展を遂げた陸海空の乗りものの文化についても、玩具の世界を通して、わかりやすく、楽しくたどっていただける内容に仕上がったのではないかと思います。

世界の消防自動車の玩具


今日は、展示における私達の工夫について、少し、お話ししたいと思います。今回、両展示室を合わせて、展示総数は1,100点。展示品自体は、全体にかなりのボリュームをもっているのですが、初夏に6号館で展示していた“子どもの祝い着“をテーマにしたものなどとは異なり、小さな乗りもの玩具を、ただ、ずらりと並べるだけでは、展示画面にメリハリがなく、また、展示風景にダイナミズムをつくりにくいこと、展示する前から、私は少々悩んでおりました。バスや乗用車、クラシックカー、スポーツカー、あるいは、消防自動車、トラック、ショベルカー、フォークリフト……。世界中から集まったこれらの玩具をどんな風に展示すれば、子どもたちが楽しんでくれるだろうか? どのように解説すれば、大人の皆さんは、乗りもの玩具のもつ文化性を感じて下さるだろうか?

私は、展示室床面を大きな道路に見立て、壁面を空に見立てようと考えました。空の乗りものの展示コーナーはブルーのクロス、機関車や列車のコーナーには、黄緑色の明るいクロス、働く車のいろいろを展示するコーナーには濃いグリーンのクロスを敷き詰めて、「空」と「レール」と「道路」の世界を分けました。
次に、道路には、それぞれ対向車線を設け、横断歩道や信号などを作りました。その道路を世界各地の車が、種類ごと、地域ごとに走行します。同じ「バス」でも、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカ……と、作られる地域や時代によって姿形は様々。玩具の乗りものは、本物の乗りものの特徴を捨象し、デフォルメし、単純ながらにその特徴をよく表現しています。一点一点見ていると、どの作品も展示してみたくなり……次第に展示数が増えていきます。ふと、気が付くと、車の台数があまりに多いので、展示室は、まるで大渋滞を引き起こしたかのよう。そこで、渋滞の原因となる「交通事故」や「工事現場」の場面を作ることを思いつきました。

特に、子どもたちに展示を楽しんでいただこうと思う夏には、これまでも、物語性のある展示画面作りを心がけてきました。実際に、展示室へ入ってきた子どもたちが、まず、どこに目をとめてくれるか、どんなふうに展示したら、展示品と語らい合って心豊かな時を過ごしてもらえるのか、夏は、彼らの様子に触れながら、楽しい展示にするためのヒントを探す季節でもあります。

さて、今回は、皆さまにご覧いただきたい場面がいくつかあります。………一つ目は、横断歩道を渡っているドイツの小さな男の子が、フランスのタクシー(ビラック社製)を停めようと手をあげている場面、二つ目は、デンマークのスクールバス(フーキット社製)が、子どもたちを乗せようと停車する場面、三つ目は、旧ソ連のトラック(1980年代製)が対向車線を越えてイタリアの自動車運搬車(セヴィ社製)に接触し、日本のパトカー数台(昭和30年代製)が救急車とともにやってきている場面、4つ目は、ドイツのトラック(へロス社製)が運んできた木片をオーストリアのフォークリフト(マタドール社製)がもちあげている場面、そして5つ目は、世界のミニカーが、広いモータープールに駐車している場面です。

横断歩道を渡っているドイツの小さな男の子が、フランスのタクシー(ビラック社製)を停めようと手をあげている場面
デンマークのスクールバス(フーキット社製)が、子どもたちを乗せようと停車する場面
旧ソ連のトラック(1980年代製)が対向車線を越えてイタリアの自動車運搬車(セヴィ社製)に接触し、日本のパトカー数台(昭和30年代製)が救急車とともにやってきている場面
ドイツのトラック(へロス社製)が運んできた木片をオーストリアのフォークリフト(マタドール社製)がもちあげている場面
世界のミニカーが、広いモータープールに駐車している場面


ご来館くださる皆さまには、玩具サイズに縮小された「小さな人」の心になっていただき、その小さくなった二つの目で、世界各地の乗りものの色と形、動く仕組み、そして遊び道具としての可能性についても、じっくりと探っていただけたら嬉しく思います。
1号館、6号館を合わせて、久しぶりに「おもちゃの館」らしい展示になったと思います。どうぞ、ご家族お揃いで、乗りもの玩具の小さな世界をお訪ね下さいませ。(尾崎織女)

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