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blogさらに内容が充実 ちりめん細工と雛人形展
●寒々とした冬の気配が漂っている当館の庭ですが、見上げると、甘夏みかんの大きな実と万作 の黄色い花が目立つようになり、地肌には可憐なユキワリイチゲの白い花も咲き始め、春が駆け足でやってきました。
●新春早々に開催する恒例の全国凧あげ祭りも無事に終了。小倉城庭園のお座敷に飾る傘飾りの制作に取り組んでいました。
●<ブログ「学芸室から」2009年2月9日>にもありますように、大勢の協力で新たに大の傘飾りが7組も完成し、既存の大の傘飾りと合わせると合計11組。この20日に小倉城庭園に出かけて設営します。21日の午前中は柳川の「さげもん」の調査に行きますが、午後からはお座敷に戻り、北九州の皆さまが傘飾りをどのように受け止めてくださるか、勉強したいと考えています。
●今回の展示のねらいは、単に傘飾りの紹介だけでなく、本物の「ちりめん細工」を知っていただくことにあります。次号で申し上げる予定ですが、私たちの長年に亘るちりめん細工復興の成果が商業主義に利用され、質の悪い化繊の中国製「ちりめん細工」が京都をはじめ全国の観光地に出回るようになり、「ちりめん細工」が質の低い土産物と誤解されることが増えました。以前から危惧していたことが現実になり、日本の伝統文化の破壊にも繋がりかねないと心配しています。
●6号館で開催している恒例の雛人形の特別展は、500組を超える膨大な雛関係の資料をベースに、毎年切り口を変えて雛の魅力や歴史などをご理解いただけるように展示しています。今年のテーマは「雛遊びの世界」。江戸期から昭和初期までの雛人形約30組を時代ごとに展示し、雛の道具類も20組。計50組もの展示は見応え充分です。
●雛関係の資料は現在も収集に取り組んでおり、今回、新しく入手した江戸期の雛3組と雛屏風2点を初公開しました。雛人形はご寄贈いただく資料も多いのですが、江戸期のものとなると稀で、今回初公開の資料はいずれもが購入資料です。江戸期の雛人形が立雛も含めて計13組も並び、格調高い展示になって、来館者から再三賛辞のお言葉をいただき喜んでいます。
●さらに今回は、昨春亡くなられた随筆家岡部伊都子様から1986年にご寄贈いただいた人間国宝岡本正太郎(四世面竹/1895~1981)作の雛人形を4年ぶりに展示しました。私は青春時代、弱者に温かな視線を注がれる岡部さんに惹かれ、著書を愛読していました。
●また山陽電鉄に勤めていた頃、同社PR誌『山陽ニュース』の編集を14年間担当し、岡部さんにも執筆いただいたことやわが娘に伊都子と名付けたご縁もあって1986年の春にご来館くださり、所蔵されていた高価な雛を大勢の方に見ていただければとご寄贈の話がでて、受け取りに京都のご自宅に家族で参上しました。
その後、3号館で長い間飾っていましたが、長期の展示で資料が痛む恐れがでて、4年ほど前に収蔵庫にしまいました。
●四世面竹のこの雛は、他の雛にない閉ざされたような目と優美な表情をしており、その独特の雰囲気は、見る人を魅了することでしょう。
(館長・井上重義)
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