日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2009.02.09

春の展示ふたつ~「雛遊びの世界」と小倉城庭園の「ちりめん細工・春の寿ぎ展」 

春恒例の雛人形展が始まり、玩具博物館にも陽光の季節がめぐってきました。今回は「雛遊びの世界」と題して、江戸末から明治・大正を経て昭和30年代までの雛人形と雛道具を一堂に集め、雛飾りの移り変わりをたどります。桃の節供(句)に遊ばれた白木の勝手道具や、桃の節句にいただく雛料理の小さな器の数々も合わせて展示し、一見、静的に感じられる雛飾りの中に、動的な遊びの様子を探していただけたら、と思っています。

京阪地方の雛の勝手道具(明治末から大正時代)

冬の展示物を梱包して収蔵し、ケース内を清掃したのち、雛人形を展示する作業には毎年、5日間ほどを要します。しんしんと冷える深夜、生命を象徴するような緋色の毛氈を敷き詰め、馴染みの古雛たちを出していく時間は、得もいわれぬ静けさに包まれています。玉眼がキラリと光る江戸古今雛のまなざしの中には150年を越える歳月が閉じ込められているようで……。白玉がたわわに下がる天冠のかすかな揺れからは、幕末の薫りが漂うようで……。すべてのケースの展示が完了したとき、心を澄ませて雛飾りを見渡せば、あちこちの雛さまたちが声を揃えて「ヤァ!」「オゥ!」と小さな歓声を上げるように感じられました。

享保雛の衣装を整える、より美しくみていただけるように…。

毎年おなじみの雛人形もあれば、久しぶりに登場したものもあり、また今回、初公開の雛飾りも数組展示しています。木々に花咲く季節、どうぞお誘い合わせの上、古雛たちに会いにお越し下さい。

   

小倉城庭園博物館「ちりめん細工・春の寿ぎ展」会期後半のお楽しみは…

昨年12月13日にオープンした北九州市立小倉城庭園博物館での「ちりめん細工・春の寿ぎ展」は、会期の半分を過ぎました。冷え込みの厳しい季節ですが、例年をはるかに上回る来館者があるそうです。皆さん一様に非常に満足して帰っていかれ、来館者は口コミもあってか徐々に増えていく傾向だと、先方のご担当者からうれしい便りをいただきました。「ちりめんで作るお手玉雛」の講習会も定員20名のところに、100名ほどの応募があり、定員をふやして3回分の講座を増発することになっています。

ちりめん細工とともに展示している檜皮葺き御殿飾り雛

こちらの企画展には、会期後半のお楽しみを設けています。来る2月21日から会期終了の3月8日まで、展示室本館の展示に加え、庭園のお座敷に桃の節句の傘飾りを展示する予定で、昨日、大型11基、小型10基の傘飾りを送り出したところです。
これらの傘飾りのうち、大型7基、小型6基は、この展示に向けて、昨年より「日本玩具博物館ちりめん細工の会」のメンバーが共同制作したものです。約100名がそれぞれ1~5点のちりめん細工作品を提出し、約15名が井上館長の指揮の下、作品の色合わせやテーマなどを考えながら組み立てを行いました。完成した傘飾りをずらりと並べてみると、それは壮観。たくさんの方々の思いがこもっていますので、力強さに満ちた作品群です。


お近くにお住まいの方々は、傘飾りの展示期間に、もう一度、小倉城庭園をお訪ね下さいませ。

(学芸員・尾崎織女)

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