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館長室から 2008.08.15

関西文化の日について

「関西文化の日」は、関西2府7県内の美術館・博物館の文化施設において、11月の一定期間、入館料をを無料とするイベントです。広く美術作品や学術資料に接する機会を提供し、愛好者の増加を図り、文化が息づく関西をアピールし関西への集客を図ることを目的に平成15年度から始まりました。
先般、当館にも趣旨を理解して参加するよう依頼がありました。しかし無料開放は当館の現状からも無理であり、その由を文書で伝えました。

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 先般、貴機構より「関西文化の日」の参加依頼のご案内をいただきました。
趣旨についてはよく理解できますが、残念ながら当館は参加できません。理由についての最大の要因は財政的な理由です。当館は一個人が消えゆく子供文化や女性の文化を後世に遺したいと、45年前から収集を始め、1974年に私財を注ぎ込んで博物館を設立し運営しています。経費に係わる主なる収入源は入館料です。
現在までに国内資料5万点、海外は150ヶ国から3万点の計8万点もの資料を収集し、6棟の建物で公開しています。財団法人化には3億円が必要と分かり、また博物館は非営利の組織であることから営利法人化せずに今日まで個人経営できました。ただ個人経営ではありますが博物館相当施設として国から認定されています。公立館でも博物館類似施設が多く、個人立の館で相当施設に認定されているのは全国でも4館ほどしかありません。
当館ほどの内容を持つ博物館は国内でも他に例がなく、来館者は全国各地から来られるまでになりました。HPで英語版も持っていますので日本語の話せない外国人もよく来館されます。そしてすばらしい博物館だと感動されます。しかしながら公的な支援や企業からの支援はなく、そのことを聞かれて話すと「日本は豊かな国ではないのか」と不思議がられるのです。
        
 関西でも博物館や美術館は民間人がその使命感から、散逸する文化遺産を後世に遺したいと、公立館に先駆けて立ち上げました。しかし、残念なのは1980年代後半から90年代にかけて、守るべき資料があるとはいえないのに自治体は巨費をかけて立派な箱物を続々と造りましたが、守るべき貴重な資料を持つ民間の館に対しての支援はありませんでした。建物は立派でもレプリカやジオラマ中心で見るべき資料がないと来館者の心が離れてゆくのは当然ではないでしょうか。全国平均で、1館あたりの入館者数はこの10年余で半減したのです。現在、博物館離れが起きている要因は、中身のない魅力のない博物館が数多く誕生したその反動でもあると考えています。
 兵庫県内でも、芦屋の滴翠美術館や篠山の丹波古陶館などは、個性的なコレクションを所蔵し関西が誇るべき文化遺産を展示する施設です。残念ながら滴翠美術館は日本博物館協会や兵庫県博物館協会からも退会されています。
 
 「関西文化の日」こそ、関西が誇るべき文化遺産を有する博物館や美術館を客観的に評価して広報することこそが大切なのではないのでしょうか。
 現在、公立博物館の多くが集客に躍起で大きな経費も使われていますが、肝心の資料の収集に関しては年間予算ゼロが半数、100万円以下が4分の1という現状をご存知でしょうか。いくら宣伝をしても、それらが期待に応えるものであり、来館者が来てよかったと感動するものでないと、再び訪れる人はいないでしょう。将来を見据えた文化振興を図られることを切に願っています。
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嬉しかったのは、早速に事務局の方から「趣旨はよく理解できます。声を聞かせていただきありがとうございました」と、電話が入ったことです。関西の文化が輝くには、単なる人集めでなく、関西が誇るべきコレクションを持つ博物館や美術館の情報を発信することこそが、関西の文化力を高めることにつながるのではないでしょうか。

(館長・井上重義)

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