「世界の鳥の造形展」によせて | 日本玩具博物館

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館長室から 2006.06.26

「世界の鳥の造形展」によせて

6号館特別展会場で「世界の鳥の造形展」が始まりました。世界70カ国から1000点にも及ぶ鳥の玩具や造形物。展示品の全てが当館 が約30年の歳月をかけて収集した資料です。恐らく国内では第1級のコレクションを形成したと自負しています。展示品の中で現在収集可能なものは2・3割。廃絶したものが多く、さらに収集できても質の低下が著しく、本当に集めた時期に恵まれたのです。

動く鳥・鳴く鳥「鳥ぐるま」の展示コーナー

当館は1977年から世界の玩具の収集に取り組んできました。収集方法は、海外の玩具や民芸資料を輸入する業者、国際見本市やギフトショウ、海外での現地収集(ヨーロッパ各地・アメリカ・ブラジル・アジア各地)、世界各地の博物館やミュージアムフレンドなどとの交流によるものでした。集めた時期がよかったのは、この20年ほどの間に、民芸的な玩具などが急速に世界中から姿を消したからです。収集にはタイミングが必要です。今後これほどの資料を収集するのは不可能です。世界の国々で作られた鳥たちの、造形の面白さや楽しさを存分にお楽しみ下さい。

世界の鳥の造形展、展示室の様子

さて当館は開館以来、個性あるコレクションの構築にこだわり、毎年1000点を超える資料の収集を計ってきました。館としての収集方針に基づき、消えゆき忘れ去られるものを収集。集大成したコレクションを企画・特別展で、その素晴らしさや大切さを訴えてきました。私はコレクションこそが博物館の生命であり、博物館の存在理由は「貴重な人類の文化遺産を保存し後世に伝えることにある」と考えて資料収集に励んできました。そして学芸スタッフの努力で、収集した資料を見やすく楽しく解りやすく展示し、来館者から、「驚きや感動」の言葉をいただくことが増えました。大人だけでなく子供も「よかったです。たのしかったです。すごかったです。」と感想ノートに残しています。

現在、博物館の多くがコレクション充実よりも集客対策に躍起のように思えます。しかし一過性の集客イベントよりも私は文化遺産を守る砦である博物館は、文化遺産を後世に伝えることにこだわるべきであると考えています。入館者数だけでなく、博物館として、人々を感動させる展示こそが、博物館をより魅力的なものにして、博物館冬の時代からの脱出を図る道が開かれるのではないかと考えています。

この特別展、愛鳥家の皆様にもぜひご覧頂き、ご感想などお寄せいただければ幸いです。

(館長・井上重義)

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