日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2006.06.21

ルーマニア・シビウ民族博物館からやってきた玩具   

先日、ルーマニア・シビウ市にあるシビウ民族博物館から国際小包が届き、中から、綺麗に梱包されたルーマニア各地の郷土玩具が出てきました。シビウ民族博物館は、<ブログ「学芸室から」2005年11月8日>でもご紹介したサスキア・フランケ・イシカワ氏のアドバイスを受けて、親しく交流を始めたルーマニアの国立博物館で、1993年頃から断続的に博物館資料の交換収集を行っています。

本年1月に、私たちは、シビウ民族博物館に向けて第4回目の寄贈品を送り出していました。市松人形と日本各地の手まり、張り子の干支玩具や土俗的な土製玩具など約20点。半年が過ぎた今月、交換の品が先方から届けられたのです。
私たちの交換資料には、いつも同じ様式のOBJECT CARD(玩具や人形の名前、作者、産地、製作年代、使用された場所や目的、形や色に込められた意味などを記したカード)を付けることにしています。

それぞれの資料につけられたOBJECT CARD/届いた品々

では、今回、シビウ民族博物館から届いたものを画像でご紹介しましょう。ルーマニアは大きく三つの地方に分かれます。北西部のトランシルバニア地方、北東部のモルドヴァ地方、南部のヴァラキア地方です。 トランシルバニア地方からは、シビウ県の織機や糸車の玩具と小さな民族衣装(人形用)、ハルギタ県コルンド村で作られるクリスマスツリー用の土製 ベルのオーナメント、コバスナ県スファンツゲオルゲ市の大晦日行事で鳴らされる摩擦太鼓の玩具、クルージ県の木製仕掛け玩具など。
ヴァラキア地方からは、ヴァルチャ県バラデスティ村で作られるままごと用の土製ティーカップ、オルト県バラス村の土製鳥笛などが届いています。合計21点です。

ヴァラキア地方バルセア県バラデスティ村(オルテニア地方)のままごとティーカップ

どれも、その地の専門家でなければ収集しにくいものばかり。こうした実物資料を手にした後、私たちは、それら一点一点の玩具が背負う歴史や暮らしの中での役割について、OBJECT CARDを手掛かりに関連書を当たりながら、少しずつ理解を深めていきます。
「ままごと道具展」「世界の民族人形展」「世界のクリスマス展」「民族楽器展」「からくり玩具展」など、今後の企画・特別展の中でも、これらの品々は展示資料としてご紹介したいと思います。

さて、今夏の特別展「世界の鳥の造形」において、鳥笛を集めたコーナーに、オルト県バラス村の鳥笛をさっそく展示しました。濃茶地に緑と白の羽根模様が描かれ、たっぷり釉薬のかかったシンプルな鳥形の笛で、尾羽から息を吹き込み、胸に開けられた指孔を開閉させると、♪ラ(A)・ミ(E)、ラ(A)・ミ(E)・・・とカッコウが鳴くような美しい音が響きます。OBJECT CARDの説明に、「musical instrument for children」(子どものための楽器)とあるのは意味深長です。

ヨーロッパの鳥笛(左からドイツ・フィンランド・ドイツ・ルーマニア)

ルーマニアだけでなく、ヨーロッパ各地の鳥笛をみると、指孔が一つ二つは設けられ、三つ以上持ったものも少なくありません。指孔があれば、音階が生まれ、メロディーを作ることが出来ます。一方、日本の郷土玩具の鳥笛をみると、鳩笛もフクロウ笛も、指孔を持たず、ポウ、ポウ・・・、ホウ、ホウ・・・と中音域の単音が多く、どれも自然の風景にとけ込んでしまいそうな音色。楽音を作ることより、自然音を志向しているように感じられます。ちなみに、鳩笛は「clay dove whistle」、フクロウ笛は「clay owl whistle」と訳されます。世界の鳥笛を集めてみると、その小さな形や単純な音色にも、民族文化が深く関わっていることに驚かされるのです。

世界の鳥笛の展示コーナー
のぞきケースには日本の鳥笛(郷土玩具)を展示しています

今後もシビウ民族博物館と私たちは地道な交流を続け、互いのコレクション充実のために寄与していこうと約束しています。数年来、資料交換を担当して下さっているCorneliu Bucur博士にこの場をお借りして感謝申し上げます。

(学芸員・尾崎織女)


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