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blog日本の伝統凧の動態展示
■新春早々の1月8日(日)、姫路公園競馬場で日本各地の伝統凧を大空にあげる第32回全国凧あげ祭りが当館と姫路市の共催で開催されます。今回も当館の呼びかけに応え、各地から凧愛好家や保存会の皆さんが集い、自慢の凧を大空に揚げて披露して下さいます。
■現在までに決定しているのは、青森県の津軽凧、新潟県今町の六角凧、静岡県井川の扇凧、愛知県豊橋の八つ花凧、奈良県吉野の袖いか、京都の扇凧、山口県見島の鬼ようず、徳島県鳴門のわんわん凧、香川県讃岐の釣鐘いか、長崎県のバラモン・日の出鶴など全国各地の珍しい凧の数々です。他にも10畳大の福助凧、6畳大の提灯凧、全長30mもあるムカデ凧、100枚以上もの凧が連なって揚る連凧など、20畳大の大凧からはがき大のミニ凧まで大小さまざまなユニークな形の凧が揚がり、日本の伝統凧のすばらしさを満喫いただく1日になると思います。
■また当日、私が大空に揚がった凧の解説を行いますので、さながら大空を展示会場にした凧の動態展示になります。見物人も約2万人。新春、このような規模内容での凧揚げは全国でも例がないと思います。入場も無料です。ぜひ御来場下さい。
■私がこの凧あげ祭りを始めたのが1975年。当館が開館した翌年の新春からです。その頃、ビニール製三角翼のゲイラカイトが大流行し、日本の空から和紙と竹で作られた和凧が姿を消そうとしていました。そのため日本の伝統凧の素晴らしさを多くの人に知ってもらい、子どもたちの思い出にもなればと、当館前の田んぼで「井上郷土玩具館(創立当時の名称)の凧あげ」を始めたのです。見物人参加者合わせても100人足らず、揚る凧も十数枚、1畳大の讃岐凧でも大凧が揚ったと大喜びでした。しかし当時では珍しい催しであり、新聞やテレビで紹介されたこともあって参加者の輪が地元の兵庫県下から大阪、京都、徳島と広がり大きくなりました。「全国凧揚げ祭り」の名を使い始めたのは第4回目から、大会とせず祭りとしたのは、競い合うのではなく凧揚げを楽しもうと言う趣旨からでした。
■姫路市との共催が始まったのは第13回目から。会場が手狭になり問題が出てきたため、姫路市と姫路観光協会の協力を得て姫路競馬場に会場を移して開催、現在に至ります。
■伝統的な年中行事としての凧揚げでなく、伝統がない土地での凧揚げ祭りが30年以上も続く例は全国でも少ないです。全国の凧愛好家への参加呼びかけと、前夜祭や当日の進行等が当館の仕事であり、会場設営と整理、駐車場や周辺の交通整理、当日の凧関係者の弁当は姫路市と、官と民とがお互いの立場を守り仕事を棲み分け協力しあったことが、この祭りを続けられた要因ではないかと思います。
■祭りに使う当館の経費は、姫路市から前夜祭他の助成金として23万円の補助をいただきますが、実際に当館が使う費用はその倍以上。当館の趣旨に賛同し協力くださるボランティアも大勢あります。経費も使いますが、当館としては日本の伝統凧の素晴らしさを知っていただき、博物館としての使命も果たしていると考えます。その使命感と無欲な姿勢が、大きな社会的評価(サントリー地域文化賞、政府の「観光カリスマ100選」)にも繋がったと思います。
(館長・井上重義)
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