新春を祝うフランス菓子「ガレット・デ・ロワ」を囲んで | 日本玩具博物館

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学芸室から 2006.01.15

新春を祝うフランス菓子「ガレット・デ・ロワ」を囲んで

「ガレット・デ・ロワ(王様のお菓子)」と呼ばれる新年の焼き菓子をご存知でしょうか? 
イエス・キリストの誕生を見届けるため、占星術をよくする三人の博士(王様)が、星の導きに従って東方からベツレヘムを訪れたのが1月6日。キリスト教世界では、この日を公現節(エピファニー)と呼び、数々の祝賀行事が開催されます。

フランス北部では、パイ生地にアーモンドクリームをたっぷりと詰めた「ガレット・デ・ロワ」がケーキ屋やパン屋に山積みとなり、これを買い求めた人々は、家族や友人たちと一緒にガレットを囲んで公現節を祝います。ガレット・デ・ロワの楽しみは、この菓子の中にフェーヴ(そら豆)が一つ、仕込まれていること。切り分けたガレットの中にフェーヴが入っていた人は王様あるいは王女様として王冠をかぶり、その日一日、家族や仲間に君臨し、皆の祝福を受けるのです。本来、そら豆だったフェーヴは、今では陶器の小さな人形に発展し、意匠をこらした陶器のフェーヴをコレクションする人たちも少なくないと聞きます。

クリスマス習俗についての書物でしか知らなかったガレット・デ・ロワとフェーヴの実物を私たちに紹介して下さったのは、当館のミュージアムフレンド、笹部いく子さん(京都市在住)です。昨夏のフランス旅行を通して陶器のフェーヴに出あい、その愛らしさと楽しい習俗に魅せられた笹部さんは、以来、精力的に様々な種類のフェーヴに関して調べ、ガレット・デ・ロワについてもあれこれ探求してこられました。キリスト降誕人形、風俗人形、菓子やクリスマスのモチーフ・・・などなど、フランス各地で作られた陶器のフェーヴの数々は、当館へも幾種類かを寄贈していただき、この冬のクリスマス展でもご紹介しているところです。

陶器のフェーヴとガレット・デ・ロワ

1月13日、笹部さんは日本玩具博物館のスタッフと一緒に一週間遅れの公現節を祝うため、2枚のガレット・デ・ロワを持ってご来館下さいました。2枚とも、本場でガレット・デ・ロワ作りを学ばれた日本人パティシエが焼いたもので、太陽(あるいは車輪)を表わす美しい模様が刻まれています。笹部さんによると、ガレット・デ・ロワの表面には、太陽の他、麦、葉(月桂樹)、ひまわりなどの模様が描かれるといいます。それから、私たちが食べる2枚のガレットにはそれぞれ、そら豆ならぬアーモンドが入っており、フランスから輸入された陶器のフェーヴは別添えになっていましたが、菓子店によっては、陶器のフェーヴを焼き込んで、ガレットを作るところもあるそうです。


来館者の絶えた夕方、館長室のテーブルを囲んで、笹部さんを含めた8人は、ワクワクしながら切り分けたガレットを、ドキドキしながら銘々の皿にとっていきます。サクサクしたパイ生地とほのかにアニスの香りが漂うアーモンドクリームは日本人の口にもよく合い、皆、美味しい!と大喜び。果たして、フェーヴの行方は・・・・・・。1枚目は一番若い学芸スタッフのガレットの中から、2枚目は館長のガレットの中からひと粒ずつのアーモンドが見つかりました! 2人とも紙の王冠をかぶり、陶器のフェーヴを手にしてご満悦。当たった人も当たらなかった人も、体験してみて初めてわかる楽しさです。


かつて、ガレットの中に仕込まれていたそら豆(フェーヴ)は、ヨーロッパでは生命力の象徴と考えられていました。新たな農耕カレンダーが始まるこの季節に、ひと粒のそら豆が登場するというのは、来る秋に豊かな収穫がもたらされることを祈念する意味があったのかもしれません。

冬至を過ぎ、新たに生まれ変わった太陽の祝日に幸福を呼ぶガレット・デ・ロワ。日本玩具博物館の2006年には、とびきりの幸運がもたらされるでしょうか。サンタクロース、いえ、日本風に言えば「年神さま」のような笹部いく子さんに感謝を。なお、ガレット・デ・ロワについてご興味をもたれた方は、Club de la Galette des Rois(日本のパティシエたちがつくる協会)をネットで検索してみて下さい。

キリスト教世界では、この公現節をもってクリスマスが終わり、クリスマスツリーなどのオーナメント類の片付けが行なわれます。私たちもそろそろクリスマス展を終わらせ、本物の春を迎える準備にとりかからなくてはなりません。展示室に緋毛氈を敷き詰める季節がやってきます。

(学芸員・尾崎織女)


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