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館長室から 2005.11.05

「世界のクリスマス展」によせて

今年もクリスマス展が始まりました。「素晴らしい展示ですね」と大勢の皆さまからお言葉をいただき喜んでいます。今ではすっかり当館の名物行事となったクリスマス展ですが、始まったのは1985年。この年の夏、私は北海道教育大学の故伊藤隆一先生のお誘いを受けて北欧旅行に参加しました。フインランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなどを訪ね、各地でクリスマスに因んだ麦わら細工の飾りや、木工品、紙製品などを入手しました。そしてその秋、収蔵していたドイツ、メキシコ、ペルーなどのクリスマス関連資料と合わせて350点を「世界のクリスマス展」と題して1号館で開催、同展は大きな反響を呼びました。
翌86年の秋は他の特別展を開催しました。ところが「クリスマス展を楽しみにしていたのに」との御意見が相次ぎ、以来87年からは毎年開催しています。89年に6号館完成後は会場を同館に移して現在に至りますが、今年は通算20回目の記念すべきクリスマス展になりました。
その後もクリスマスの季節にはヨーロッパ各地を訪ね、さらにはカナダ、アメリカ、ブラジルなどでも現地採集し、大勢の皆様の協力もあって当館のクリスマスコレクションは世界約50カ国から3000点を超える膨大なコレクションになりました。時期が良かったからで、恐らく国内では右に並ぶコレクションはないと思います。ところでプラハを訪ねたとき、市内のマーケットで売られていた麦わらのオーナメントの大半が中国製であることに衝撃を受けましたが、それが世界的な流れにもなっているのです。

今年の初公開資料で人気があるのが写真のペルーの大型レタブロ(箱型祭壇)です。インカ帝国がスペインに征服されたとき、スペインの牧師が布教の道具として持ち込んだ携帯用祭壇が始まりと伝わります。高さ75cmありますが、中段の聖誕の場面をとり囲むように音楽隊、帽子屋、花屋、壷売りなどが囲みます。登場人物を数えると約200人、壮観です。

展示をご覧になった皆さまから「展示替えが大変ですね」との言葉をよくいただきます。正直、大変です。6号館は展示ケースの延長が約30m。今回はドイツ展からクリスマス展への移行でした。1,000点に及ぶ膨大な展示品を収蔵し、さらには収蔵庫から展示品を出して選定、展示します。尾崎学芸員の計画に基づき、会場の設営から展示と学芸関係者全員(4名)と協力者2名の6名が連日深夜に及ぶ作業を続け、今回は収蔵が容易であったことから約4日間でほぼ完成しました。結果として過去最高の素晴らしい展示になり喜んでいます。

(館長・井上重義)

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