日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2012.04.13

目覚めの春~美しきイースター・エッグ~

桜の花が満開になる春は、別れと出会いの季節。3月、当館においてもこの春は長年にわたって博物館活動をともにしてきたスタッフ数人が退職し、寂しさと新たな出会いへの期待が交錯する春を迎えました。そして4月、受付・ミュージアムショップ関係にも、学芸室にも、ちりめん細工材料室にも、新たなスタッフが加わり、元気一杯、明るい笑顔で担当業務についてくれています。また、新しいスタッフと一緒に、皆さまに愛される玩具博物館をつくっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申しあげます。

学芸室では特別展示室の展示替え作業が終わり、「端午の節句~明治・大正の武者飾り~」の準備が整いました。今回、6号館西室の「江戸時代のお雛さま」ゾーンを収蔵し、そこに武者人形を飾っています。東室の「明治時代のお雛さま」ゾーンはそのまま残しておりますので、特別展示室では、西側に明治・大正時代の武者飾りを、東側に明治時代の雛飾りをご覧いただくことができます。明治時代から大正時代にかけて、京阪地方を中心とした都市部で祝われた節句飾りの世界――深緑色の毛せんの上のきりりとした武者人形と、緋色の毛せんの上の華やかな雛人形―――を対比的にお楽しみいただければと思います。

木々が芽吹きを始める欧米の春は、“イースター(復活祭)”が華やかに祝われる季節でもあります。復活祭(=イースター)は、イエス・キリストが十字架上で亡くなって3日目によみがえったことを祝う行事です。春分の日を過ぎ、最初に満月を迎えた後の日曜日が復活祭当日(=イースター・サンデー)にあたります。本年は、西方教会では4月8日、東方教会では4月15日がイースター・サンデーです。日本人にとってはクリスマスの方がずっとなじみが深いものとなっていますが、キリスト教世界において、イースターの祝祭はクリスマスよりもさらに重要な意味をもち、すべての生命が目覚め、再生するスタートラインとして、春の代名詞ともなっているようです。

復活祭の雰囲気を盛り上げるのが“イースター・エッグ”と呼ばれる卵です。卵殻を彩色して裸木に飾り付けたり、早朝、大人たちが庭や野原のあちらこちらに隠したゆで卵を子どもたちに探させたり…。近年、卵の形のチョコレートを、家族や親しい人同士で交換する風習も盛んになっているそうです。古来、卵は、生産力の源として神聖視され、目覚めや再生を象徴するものと考えられてきたことから、春の祝祭と結びついたと考えられます。

100年前のイースターエッグ(チェコ・モラビア地方)

装飾物となるイースター・エッグは、卵の上部に小さな穴を開けて中身が抜かれ、殻に数々の美しい絵柄が描かれるのですが、これにはどのような意味があるのでしょうか。地域によって異なりますが、ポーランド出身の知人に尋ねると、魚は信仰心を、小鳥は子宝を、樹木は永遠の若さを表わし、花は愛と慈悲、麦穂は暮らしの豊かさ、十字は結婚、波線は守護を象徴するのだと教えてくれました。当館は、古いものでは、大正時代末期のチェコスロバキア(現在のチェコ)で作られたろうけつ染めのイースターエッグを収蔵しています。その昔、チェコの農村部では、イースター・サンデーになると、小枝のムチを持って、青年は乙女を、乙女は青年を打ち、打たれた者は打った者に自分が彩色した卵を贈るという風習がありました。
男女が互いの生命力を喚起して、豊かな実りと生命の誕生を願ったものと考えられます。

写真にご紹介する美しい彩色卵は、ウクライナ、チェコ、ポーランド、ルーマニア、ドイツで作られた伝統的な作品の数々。これらは、昨年度、当館友の会の笹部いく子さんからご紹介を受け、東欧民芸を専門的に扱っておられるショップを通して入手させていただいた資料です。ろうけつ染めの手法で模様付けされたもの、細密なペンで幾何学文様が描かれたもの、色つきの蜜蠟で表面を盛り上げるように彩色されたもの、農村に伝わる切り紙細工を張り付けたもの、卵殻の表面が繊細に彫刻されたもの…と様々な手法がみられ、どれもこれも美しい作品ばかりです。この春、「イースターエッグとウサギの玩具」というようなテーマで春らしい展示をしてみたいと計画しておりましたが、その企画は次年度以降に持ち越し、美しいイースターエッグの数々は、今夏の特別展「世界の鳥のおもちゃ」で、鶏の造形にからめてご紹介したいと思っています。
目覚めの春が皆さまにとって、よきスタートラインとなっていますように。(尾崎織女)

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