プレイコーナー便り  | 日本玩具博物館

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学芸室から 2011.08.23

プレイコーナー便り 

当館には2か所のプレイコーナーがあります。一つはコマやけん玉、輪抜き達磨やはしご達磨など、日本の伝承玩具に触れる場所、もう一つは ドイツやフィンランド、チェコやスペインなど、ヨーロッパの木製玩具で遊べる部屋です。後者には、歩きはじめた子どものためのプルトーイや、3歳前後の小さな子を夢中にさせる玉ころがしなどを多く設置しています。学芸室と壁ひとつ隔てて、このプレイコーナーから、日々、楽しげな声が響いてきます。時には「帰りたくない」と言って大泣きする子の声が聞こえることも。

そんな中、幼い女の子の声が耳に届きました。―――おやすみなさい。テントウムシさん。起きたらご飯を食べてね。―――そのあまりに可愛らしい声に、そっとプレイコーナーをのぞくと………3歳ぐらいの女の子が、子ども用の座布団をベッドに、スウェーデンの「テントウムシ」の木製玩具を寝かしつけているところでした。テントウムシの枕もとには、お椀にいっぱい、玉ころがし用のビー玉が置かれていました。まぁ、なんて可愛らしいこと!と笑みがこぼれました。

テントウムシがお布団で寝ています・・・

虫をテーマにした玩具の中、ヨーロッパ各地で題材としてく取り上げられるのがテントウムシです。中でも七星のテントウムシの玩具はとても親しまれているように感じられます。日本では、テントウムシのことを、天のお日さまを指して飛ぶから「天道虫」と綴ると聞きますが、英語では「Lady bird(レディー・バード)」、ドイツ語では「Marienkafer(マリエンクウェーファー)」と呼ばれるそうです。Ladyは聖母マリアのこと。キリスト教国には、テントウムシは、聖母マリアの使いとなって農作物を食い荒らす小さな害虫を食べ、豊作をもたらしてくれる、というような伝説もあり、古来、広く愛される虫のひとつです。そのような心情がもとになって、テントウムシの玩具はヨーロッパの国々で支持され、クリスマス飾りのモチーフにも、時に取り上げられるでしょう。オーストリアではテントウムシに行き合うと天候に恵まれるとか、スウェーデンではテントウムシが女性の手にとまると結婚が近いとか、国々に楽しい言い伝えがあるようです。

BRIO社のテントウムシ 脚を動かして進むように裏には仕掛けが

プレイコーナーの「テントウムシ」(スウェーデン/BRIO社製)は、紐を引くと、腹部の車が転がって前進する“プルトーイ”、脚をゆらゆら動かす仕組みが付けられています。20年以上の歳月、たくさんの子どもたちに遊ばれ、傷んではいますが、長く愛された玩具がもつ独特の輝きに満ちています。

(学芸員・尾崎織女)

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