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「世界のクリスマス物語・2009」オープン!
*秋・冬恒例のクリスマス展がオープンし、日本玩具博物館も本格的な秋を迎えました。当館のクリスマス展は、クリスマス・オーナメント(装飾)を通して、クリスマスの意味を探る試みです。所蔵資料の中から何を取り出し、どのような切り口で、この行事の中の何をご紹介しようか・・・、それは毎年、楽しく悩むところなのですが、25回目を数える今年は、二つのテーマで展示構成を考えてみました。
*<クリスマス物語>では、「クリスマスを待つ季節」「光の復活祭」「キリストの降誕」「サンタクロースの訪問」の項目を設けて、クリスマス人形とともに、各地の冬の物語を紹介しています。こちらの部屋では、“冬の夜に輝く光”――冬至を過ぎて再生する太陽、三人の博士を導くベツレヘムの星、人々の心に光をもたらすイエス=キリスト――を表現したいと思い、ケース床面に黒いフェルトを敷き詰めて、世界各地のキリスト降誕人形やキャンドルスタンドの数々を展示しました。それらの上、ケース壁面には経木細工や麦わら細工の光の造形を散りばめました。
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*<ヨーロッパ・クリスマス紀行>では、本場ヨーロッパのクリスマスツリー飾りを取り上げ、ツリー発祥の地とも言われるドイツを中心に、「中欧」「北欧」「東欧」「南欧」と、4つの地域に分けて展示しています。こちらの部屋は、“モミの木の森のホワイト・クリスマス”をイメージし、地域によるオーナメントの違いに焦点をあてています。人々の冬の暮らしに深く関わり、それだからこそ独自性に満ち溢れたヨーロッパ各地のクリスマス風景を、それぞれに美しく描いてみたいと考えたのですが、ご覧下さる皆さまにはどのように感じられるでしょうか?
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*毎年の10月・11月は、周辺の小学校からの団体来館で、館内は大賑わいになるところ、今年は、新型インフルエンザの流行によって、社会見学を見合わせる学校も多く、さびしい秋の日々です。けれどもその分、日本におけるクリスマス・オーナメントの歴史を調査しているという雑誌編集者の方々と展示品を細見したり、サンタクロースの意味について知りたいという学生さんをゆっくりご案内したり、プロテスタントの牧師さまとクリスマス飾りにおける宗教的情操について、静かにじっくり話し合ったり・・・と、心穏やかに過ぎていく秋の日々でもあります。
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*去る水曜日には、ドイツ・エアランゲンから懐かしいお客さまをお迎えしていました。Kiyoko&Herbert Furumotoご夫妻――ドイツ・エルツ(ゲビルゲ)地方の木製玩具、特にミニチュア玩具をサイド・ワークで研究されているご主人と日独通訳者の奥さま――が、初めて当館をご訪問下さったのは1990年9月のこと。お人柄の素晴らしいお二人と私たちはすぐに友人となり、その後、Herbertさんは、ニュールンベルクの玩具市へ井上館長をご招待下さったり、エルツ地方の木製玩具産地の中心であるザイフェンの町をご案内下さったり、また、当館友の会主催のクリスマスマーケット・ツアーのガイド役を務めて下さったり…と、様々な思い出を重ねてきました。そのツアーに同行させていただいた10日間、Kiyokoさんから、私はどれほど多くのことを学ばせていただいたことでしょう。ヨーロッパのクリスマス行事を考える上での、大きな大きな糧を頂戴したのです。そしてまた、日本玩具博物館が、ドイツ人をも驚かせるドイツ木製玩具コレクションを形成できたのも、ひとつにはFurumotoご夫妻のご協力があったからこそです。
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*この秋、一時帰国なさったご夫妻をご案内して、井上館長は、「東北こけしめぐり」の旅に出かけていました。東北の旅を終えられたご夫妻は、「世界のクリスマス物語」展を観にご来館されたのですが、東西ドイツ統一後、急速に変転するエルツ地方の現状やザイフェンやグリュンハイヒェンにおけるマイスター(熟練工)の世代交代について、展示品のひとつひとつ取り上げながら、たくさんの興味深いお話をなさって下さいました。
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*Furumotoご夫妻とは、これからも友情を積み重ねていきたいと思いますし、Herbert Furumotoさんのエルツ地方の玩具収集とご研究内容については、いつか、皆さまによいカタチでご紹介できる機会があれば、と思い巡らせています。
(学芸員・尾崎織女)
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