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学芸室から 2017.06.16

夏への展示替え・その1~「世界の民族楽器と音の出る玩具展」~

初夏と夏が行き合う気候のはざまにあって、6月の学芸室はいくつかの企画展を準備する季節です。まずは6号館に「世界の民族楽器と音の出るおもちゃ」展を。世界の発音玩具コレクションの総覧は9年ぶりです。この間にまた充実を重ねたものですから、見ていただきたい楽器、聴いていいただきたい発音玩具が数限りなくあって、展示品を選びあげるのに四苦八苦。どれもこれも、葦や竹や瓢箪やココナツの実殻、またヤシの葉や麻の繊維や麦わらなど、自然素材から生まれた素朴な楽器ばかりで、ひとつひとつのコンディションと音を確かめながら、展示をレイアウトしていく作業にはたっぷり深夜まで5日間を費やしました。

「叩く楽器」の展示コーナー(一部)


今回は、「振る」「振り回す」「弾く」「こする」「吹く」「叩く」———音を出す行為による分類展示です。素朴な自然素材の発音玩具や音具を母体として各地に民族色豊かな楽器が生まれ、安定した楽器へと発展していく様子、逆に楽器になったものを真似て玩具が作られていく様子――その双方向の関わりをご覧いただきたく思っています。

例えば、1930年代中国の東北部で盛んに作られ愛されていた「コオロギ」の玩具があります。♪♪キリキリキリ・・・キリキリキリ・・・キリキリキリキリ・・・・・・小さなコオロギをのせた紅い蕪から出ているコウリャン片を持って細かく左右に動かすと、虫たちが羽根をこすり合わせるような音が響きます。コウリャンの太い茎の表面を薄く切り出して細い弦とし、その弦と交差させるように別のコウリャン片を差し込んで楊枝で止めると、そこに松脂をつけます。キリキリと鳴くコオロギの音は、松脂をつけた部分がこすれる音なのです。「切り出し弦」と「松脂」を利用した“こする”発音玩具は、たとえば胡弓(胡琴)のような、“こする”楽器の母体ともなったと考えられます。そうして、いったん楽器が完成されると、その楽器を真似てかわいらしい玩具が誕生するのです。


展示室には、アンクルンや親指ピアノ、エクタールやマラカスなど、自由に手にとって音を楽しんでいただく楽器を設置しています。ご来館の方々が思い思いにリズムやメロディーをつくり、それが即興の合奏に発展したりする様子が日々、繰り広げられていてとても楽しい6号館です。音を聴いていただく解説会も開催してまいりますので、時間を合わせてお越しください。

触れていただける楽器を展示室にちりばめています

(学芸員・尾崎織女)

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