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blog『伝承の裁縫お細工物~江戸・明治のちりめん細工』(雄鶏社)発刊
*去る夏のころから、展示活動や講座やワークショップなどの開催とともに、懸命になって制作を進めてきた本ができあがり、本日、編集出版を扱って下さった雄鶏社より、先行して数十冊の贈呈本が手元に届きました。
*編集者、カメラマンをはじめ、今回、一緒に仕事をさせていただいたのは、『四季を彩るちりめん細工』(井上重義監修・2000年刊)をはじめ、数々の書籍づくりにおいて、大変お世話になった方々で、そんな皆様との協同作業は本当に楽しいものでした。
*雄鶏社の佐藤周子さんと本全体の構成をたて、撮影作品を決定したのが9月中旬のこと。9月26日から29日には、カメラマンの山本正樹さんとスタッフの方々とともに4日間、撮影作業に没頭しました。ちりめん細工研究会の天野美紗子さんには、ほぼ全日、撮影する古作品のちょっとした手直しなどについて、ご協力をいただきました。
*その後、章ごとの解説文や掲載資料の情報についてのテキストをまとめて原稿提出を完了したのが10月8日。第一回目の校正は10月23日、第二校正が11月7日、色校正などを終えて校了となったのが11月16日ーーと、編集作業は急ピッチで進みました。
*本書は日本玩具博物館が後世に伝えたい裁縫お細工物コレクションを様々な角度からご紹介するものです。
「第一章・縮緬の裁縫お細工物」では、かつて“裁縫お細工物”と総称されていたちりめん細工がどのようなものかを概観し、「第二章・近世に生まれたちりめん細工」と「第三章・女学生たちのちりめん細工」のなかでは、多くの作品を交えて歴史を概説しています。「第四章・ちりめん細工の形と心」では、①四季の風物を取り込んだ作品、②遊び心が盛り込まれた作品、③健康や長寿、招福を願う造形、④歴史物語や文学、芝居を題材にした作品、⑤嫁入りのお細工物、⑥子育てのお細工物の6つの項目によって、お細工物にまつわる習俗などもご紹介しています。
第五章には「今に甦るちりめん細工」として、つまみ細工やきりばめ細工を応用した作品の作り方も掲載され、これまでのちりめん細工本にはない内容です。
*私は本書の構成や解説を担当させていただきましたが、古文献と格闘し、裁縫お細工物をとりまく習俗などについても調べを進める中で、ずいぶん多くの発見がありました。本当によい勉強の機会をいただき、雄鶏社の佐藤周子さん、カメラマンの山本正樹さんをはじめ、一冊の本づくりに懸命に携わって下さった皆様に深甚の感謝をささげます。そして思うように進めてもらったらいいよと一切を任せて下さった井上重義館長、よい経験をありがとうございました。
*年末から年明け、書店の美術工芸棚と手芸棚の両方に並んでいくことと思います。忘れられていく日本女性の手の技と心がしっかりと一冊に収まっているので、たくさんの方々に手にとっていただきたいなと思っています。
*また、この本の出版と並行して、『ちりめん細工 お手玉とお祝物』(井上重義監修/日本ヴォーグ社)の準備も進んでいますので、どうぞご期待下さいませ。
(学芸員・尾崎織女)
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