日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2008.06.21

「音とあそぶ展」賑やかにオープン!

🎻6号館で、夏の特別展「音とあそぶ~発音玩具と民族楽器~」が始まりました。1999年以来、9年ぶり3回目の開催です。1993年、初めての「音とあそぶ」展は、1号館での企画展で、当時、関連資料総数は約500点。それが、今では2,000点近くに増え、この15年間に楽器屋さんを始められそうなコレクションとなりました。そうして一堂に集合した発音玩具(toys that make sound)、鳴り物(noisemakers)、楽器(musical instruments)たちは、あっちこっち、楽しい世界への窓を開け、あの人この人、たくさんの面白い個性との出会いをもたらしてくれました。

「叩く」民族楽器の展示コーナー
展示風景…展示ケースの前に体験できる楽器を設置

🎻今回、展示室の西側に「発音玩具」を、東側に「民族楽器」を展示しました。「発音玩具」のコーナーでは、世界各地に伝承されるがらがらや鈴、でんでん太鼓、ぶんぶん独楽、笛やラッパなどを集め、「振る」「振りまわす」「叩く」「吹く」「弾く」「こする」の発音行為によってグループわけしました。「民族楽器」のコーナーでは、世界約60ヶ国からやってきた素朴な楽器(儀礼に登場するもの、演奏用の楽器、生活音具など)を集め、こちらも、「振る」「振りまわす」「叩く」「吹く」「弾く」「こする」の発音行為によってグループわけして展示しました。では、このような対照展示から、どんなことが見えてくるでしょうか。

🎻「弾く(はじく)玩具」のグループに、ハンガリー・ケチキメートで作られた長さ17cmほどの小さな葦のチターがあります。子どもたちが自然の中で作る伝承玩具です。葦の表面を薄く切り出し、2本の弦が出来たら、その弦の垂直方向に琴柱を立てるように、葦片を差し込みます。弦を親指で弾くと、ビン、ビン♪…と、かすれた小さな音が響きます。

🎻一方、「弾く楽器」のグループには、フィリピンに伝わる竹のチター「ズルダイ」(長さ約40cm)やナイジェリアの葦のチター「モロ」(長さ約35cm)を展示しています。ズルダイは、竹の表皮から幾本もの弦を切り出して、それぞれの弦に琴柱を立てた楽器、モロは、切り出し弦をつけた葦を筏状に組み合わせ、下に共鳴箱となる瓢箪を置いて演奏する楽器です。爪弾くと、ポロン、ポロン♪…と、雑音性のあるやさしい音色が響きます。ズルダイやモロが洗練を重ねて、西洋のチターや中近東のダルシマー、あるいは、東洋の琴へと発展していくわけですから、これらは、今、演奏家が使う弦楽器のご先祖さまにあたるもの、といえるでしょうか。

🎻玩具として伝わる楽器は、発音の仕組自体が明確。その素朴さは、民族楽器に共通しています。大昔に人々が発見した音 を出す仕組は、伝承玩具の中に保存され、また民族儀礼などに登場する楽器の中に保存されている、と考えられそうです。

「楽器のはじまり」の展示コーナー

🎻展示室には、「楽器のはじまり」という項目で、木の実殻のがらがらや笛、骨や貝殻の笛や打ちものなど、自然物に少し手を加えただけの楽器を集めました。はじまりの楽器は、世界各地の子どもたちが作って遊ぶ伝承玩具と非常によく似ているではありませんか!

🎻そのようなことを豊かな展示物を通して、たくさん発見していただきたいと思います。また、展示室のあちこちに、自由に音を楽しんでいただけるよう、触って遊べる楽器をちりばめました。

🎻今日も、おもちゃ館の梅雨空に、来館者が奏でる一弦琴「ゴピチャンド」、ベトナムの木魚セット、ペルーの「チャフチャ」マラカス……たくさんの音が響いていました。振る、叩く、弾く、こする…、そして歌う。あまりに楽しそうな音色に展示室をのぞけば、見ず知らずの来館者同士が、インドの太鼓「ドーワクドリワリ」とタンザニアの親指ピアノ「カリンバ」、ペルーのでんでん太鼓「ダイムロ」でセッションしておられました。今年も、日本玩具博物館に、ワクワク、楽しい夏がやってきます。

(学芸員・尾崎織女)



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