クリスマスのかわいいお客さま | 日本玩具博物館

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学芸室から 2007.12.04

クリスマスのかわいいお客さま

この時期、恒例となったクリスマス展に、博物館周辺のキリスト教系幼稚園から小さな子どもたちの来場が相次ぎます。20~30人ぐらいのグループでの来館が多いのですが、そんなときには必ず、クリスマス飾りのお話をするようにしています。

子どもたちは、幼稚園で、すでにキリスト降誕の物語を習っているので、各地の降誕人形を取り出して紹介すると、登場人物のことをよく知っていて私たちは驚かされます。時には、クリスマスに行う降誕劇の練習が始まっている幼稚園もあって、「ぼく、羊飼い!」「ぼくはメルキオールさま」「わたしは天使、羽根生えてるねん・・・」と、降誕劇で自分の担当する役柄について口々に話し出す子どもたちもいます。

メキシコ・ハリスコ州トナラのキリスト降誕人形 Photo by Haruhiko Shimauchi

次に、クリスマスに飾られるオーナメントの中で子どもたちの目が釘付けになるのは、お菓子のツリー飾りでしょうか。チェコのパン細工・ヴィゾヴィーチェを「お煎餅!?」と思う子があったり、セルビアのきびがら細工のウサギのツリー飾りをしげしげと見ながら「ウサギの顔のところに飴ちゃんが入っとるぅ!」と嬉しそうにそっと教えてくれる子があったり・・・・・・小さい子どもたちの素直な発想はいつもおもしろくて、会場に居る大人たちの笑顔を誘います。

「お煎餅?!」チェコのパン細工のオーナメント  Photo by Haruhiko Shimauchi

世界の国々に伝わるサンタクロースの色々な姿を紹介した後、キャンドルに火を点して、展示室の電気を消すと、口々に賑やかだった子どもたちはじっと炎を見つめて静かになり、周りが穏やかな空気に満たされます。そんなとき、暗い冬のさなかに祝われるクリスマスにとって、暖かい光がどれだけ大切なものなのかをそっと話すと、その言葉は子どもたちの中にすうっと、浸み込んでいくように感じます。
それから、展示ケースの中からオルゴールを取り出して、音楽を流します。知っている曲だったりすると、誰からともなく、オルゴールに合わせてかわいい声の合唱になることがあります。
  ・・・・・・♪ 聖し この夜 星は光り 救いの御子は 御母の胸に 
      眠りたもう 夢やすく・・・・

先日は、幼稚園の子ども達がクリスマス展会場を暗くして歌っている同じ会場に、何人か年配のサラリーマン男性が来館しておられました。静かにご覧になりたい向きには、大変、申し訳ないことになってしまいますので、ひと言お詫びを申しあげたところ、「最近、仕事に明け暮れていて、こんな風景に出合うことはなかなかないんですよ。ほっとしたというか、心が洗われたというか・・・。出張帰りだったのですが、ここに来られて本当によかったです。」と笑顔でおっしゃって下さいました。

ドイツの光のピラミッド

博物館は、モノと出合う場であることに違いはありませんが、同時に、モノを囲んで、普段、接することのない様々な世代がそれとなく交流を図ることができる場でもあると思います。人は、様々な世代の様々な価値観の中でこそ、健全に育っていくものだと思います。小さな子どもやお年寄りや、そうした年齢層と普段はあまり接する機会のない働き盛りの大人たちが、同じキャンドルの火を囲んで、穏やかな時をともに過ごす……そうした体験は、たぶん博物館だからこそ可能なことなのではないかと、かわいいクリスマスのお客さまのたくさんの顔を見ながら、あらためて思ったことです。

(学芸員・尾崎織女)

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