日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2007.11.07

「日本絹の里」でちりめん細工展オープン!

過日は、井上館長とともに群馬県高崎市にある「日本絹の里」へちりめん細工展の準備と開会行事に出かけていました。日本絹の里は、繭や生糸に関する資料や絹製品などを展示し、絹をつかった染色体験などを行い、絹をとりまく文化と蚕糸技術の継承にとりくむ博物館施設です。昨年度末に、同館の企画担当者から、縮緬もまた絹織物であることから、「ぜひ、絹の本場で!」とお話があり、春から共同で企画を進めてきました。

展示準備作業は、会場設営、資料開梱、展示、照明合わせ・・・と、スムーズに進み、「暮らしの中のちりめん遊び展」は、絹の里の4名の学芸スタッフと一緒に1日半がかりで立ち上がりました。

日本絹の里のスタッフの皆さんと、展示作業を終えて記念撮影

吹き抜けになった会場中央のオブジェは、繭から幾筋にものびる絹糸と絹織物を表現しているそうですが、この展示のための造作であるかのように、ちりめん細工資料とよくマッチしています。


オープンの日は、台風20号の余波で風雨が吹き荒れるあいにくの空模様でしたが、多くの方々が来場下さり、講演会も展示解説会も無事、盛況のうちに終えることができました。

高崎は、蚕糸業で栄えた町らしく、駅に着くと、大小のダルマが出迎えてくれます。土産物店にもダルマたちがいっぱい! 郷土玩具愛好者の間で、「高崎」といえば、ダルマです。五穀豊穣、商売繁盛、選挙当選、受験合格・・・など、今では何にでも利く縁起物として愛されていますが、この地方では、もっぱら、養蚕の守り、豊蚕を願う縁起物として愛されてきました。蚕が孵化することを「起きる」、繭をつくることを「上がる」ということから、張子のダルマ=起き上がり小法師と結びつけられたとも、またダルマの形が繭玉に似ていることからの発想とも考えられます。

駅の土産物店でもとめた七色の子ダルマ (1個250円)

高崎ではダルマと並んで招き猫も有名です。彩色は華やかになったものの、今も昔ながらの木型から製作されているため、形は変わっていないようです。猫が蚕の天敵であるねずみを退治することから、ダルマと同様、養蚕の守りとも言われます。
土産物店では、ダルマも招き猫も次々に買われていき、「彼らはけっこう人気者だよ」と地元の人たちが目を細めておられました。

そういえば、中国でも、養蚕の盛んな江南地方(長江下流域)では、「蚕猫」といって、ねずみを撃退すべく、蚕房においてまじないとした土製の猫がありました。当館では江蘇省や浙江省の蚕猫をいくつか所蔵しています。国が違っても発想は共通するのですね。

………ずいぶん、話が逸れてしまいました。高崎でのちりめん細工展には、たばこと塩の博物館(東京・渋谷)でのちりめん細工展以降に収集した作品も展示しておりますので、関東・中部地方の皆さまには、紅葉狩りを兼ねて、養蚕の里、絹の里を是非、お訪ね下さい。

(学芸員・尾崎織女)

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