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学芸室から 2020.02.16

自作された「雛の勝手道具」

🌸春恒例の特別展「雛まつり~御殿飾りの世界」――日曜日ごとの展示解説会を始めました。今日は雨模様の一日でしたが、様々な世代の皆さんが雛人形の表情に目をこらし、様式の違いや時代の移り変わりなどを熱心にご覧下さいました。
🌸人形たちを囲み、日本の人形文化に思いを巡らせるひととき――展示解説会は、このあと、2月23日、3月1日、8日、22日・・・と続きます。各日曜日、午後2時30分から小1時間程度を予定しておりますので、時間を合わせてご来館下さいませ。

今日の展示解説会の様子


🌸さて、今日は、「京阪地方の“雛の勝手道具”を自作してみた」と段ボール箱を抱えてお訪ね下さった方がありました。
🌸江戸後期の京阪地方では、大名道具を小さく作った黒漆塗り金蒔絵の雛道具よりも、身近な台所の様子をそっくりそのまま映した白木の雛道具が愛されていました。小さな台所(=勝手)は、車井戸、流し場、水屋の区画に分けられ、台所で活躍するまな板や包丁、樽や桶、石臼やほうろく、笊や籠、鰹節削りやネズミ捕りまで丁寧に作られていて、ままごと遊びを始めたくなる楽しさです。雛の勝手道具は、明治、大正、昭和初期ごろまでは御殿飾りに添え飾られ、女性たちの遊び心をくすぐりました。
🌸そのような雛道具を「自作してみた」とおっしゃるのです。段ボール箱から登場した作品を拝見して驚きました。一つ一つの道具が素材から作り方まで本物に模って作られているです。 かまど(=おくどさん)には線香を仕込み、銅がねの煙突から煙が出るしかけまで! ――「よくここまでお作りになられましたね…」と館長、スタッフ一同、その仕上がりにびっくり!

京都の松井さんが自作された雛の勝手道具……展示解説会にご両親と参加された女の子がそっと遊ばせてもらって大喜び!!


🌸京都のご自宅には、ご当主の姉君のものであった昭和初期ごろの「檜皮葺御殿飾り雛」をご所蔵です。その雛人形に昔ながらの京阪型の「勝手道具」を添え飾りたいと思われたのが始まりで、それから、実物を見て回り、材料を集め、加工するための道具を作り、―――3年ほどかけてコツコツ、コツコツと作りこんでいかれたと伺いました。
🌸昨年夏、当館で開催した「世界と日本のままごと道具」展には、明治・大正・昭和時代の雛の「勝手道具」をずらりと並べたのですが、それらも熟覧されて作品に生かされたそうです。

2019年夏の特別展「世界と日本のままごと道具」にコーナー展示していた京阪地方の“雛の勝手道具”いろいろ 残念ながら、本年の雛まつり展には勝手道具を展示しておりません。


🌸―――「こうした雛道具は、様々な専門職人の技術の結晶だと、作ってみてよく理解できました。その道の修業をしていない者が作るには、ここらが限界です…」と話されたのが印象的です。自ら作ってみる―――そうすることでモノの価値や意味がわかるというものですね。
松井さん、お心のこもった作品を見せて下さり本当にありがとございました。

(学芸員・尾崎織女)

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