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blogドイツから届いたイースターエッグ
🌸緋桃、利休梅、木蓮、土佐ミズキ、染井吉野・・・・玩具博物館の木々が一斉に花を咲かせて春爛漫の好季節です。「雛の世界」展も会期が終わりに近づきましたが、春休みとあって、展示室は連日、家族連れの来館者で賑わっています。
🌸さて、生命が再び芽吹くこの季節、キリスト教世界ではイースター(=復活祭)が祝われます。イースターは、イエス・キリストの復活を祝う祭りで、春分の日を過ぎ、最初に満月を迎えた後の日曜日がイースター当日にあたります。今年は4月8日がイースター・サンデーです。ヨーロッパのイースターには、美しく彩色された卵やパン、それらを飾った木々が町中に登場し、人々はキリストの復活と大自然の春の目覚めを喜び合います。
🌸イースターが近づくと、子どもたちは、卵の殻に模様や絵を描いて、木に飾りつけたり、庭や野原にゆで卵を隠して、卵さがしを楽しんだり・・・・・・。今では、卵形をしたチョコレートを、家族や親しい人同士で交換する風習も盛んになっているようです。
🌸一昨日、十数年前から資料交換などを行っているドイツのヒラ・シュッツさん(<ブログ「学芸室から」2005年6月27日>でご紹介しています)から、イースターの贈り物が届きました。小さな小包の中には、彩色されたウクライナ製の卵(=イースター・エッグ)や手づくりの鶏形卵ホールダー、それからドイツ・エルツゲビルゲ地方の兎たち(=イースター・ラビット)などがぎっしり納められていました。
🌸イースター・エッグは、本物の鶏卵の中身を抜きとり、卵殻に特殊な染料で伝統的な模様が描かれたものや、ロウで染め抜いたもの、また本物の卵殻では壊れやすいため、卵形の木に彫ったり、描いたりして模様付けしたものなど様々です。
🌸それでは、卵殻に描かれる模様にはどんな意味があるのでしょうか。国や地域によって違いがありますが、たとえば、魚はキリスト教への信仰心、鳥は子宝、樹木は永遠の若さを表し、花は愛と慈悲、麦穂は豊かさ、十字は結婚を象徴するそうです。
🌸卵は古来、生産力、繁殖力の源として神聖視され、孵化することから、目覚めや再生につながると考えられてきました。枯れ木にたくさんのイースター・エッグがつるされた造形は、華やかで美しいものですが、これには、農耕の始まりの季節にあたって、秋の豊かな実りを予祝する民俗的な心情がこめられていたと考えられます。
🌸ヨーロッパには古くから、「兎がイースター・エッグを運んでくる」という伝承があり、兎とイースターとのつながりの深さを示しています。ゲルマン系の人々にとって、兎は新しい種をもたらす豊穣のシンボルと考えられ、また、他者のために自分を犠牲にする動物と信じられていたため、キリスト教の心にも通じるものだったのでしょう。めぐりきた春に、草花が芽吹き、新しい生命が生まれていく喜びを表現するのがイースター・エッグなら、イースター・ラビットは、生命の源を持って大地を駆け回る「喜びの配達者」でしょうか。
🌸こうして、少しずつですが、東欧や中欧の各地で作られたイースターにまつわるオーナメントや玩具が手元に増えてきました。いつか、イースターの伝承的な飾り物などを集めた展覧会を行ってみたいと思っています。
🌸シュッツさんへの当館からの返礼の贈り物は、今年の干支、猪の郷土玩具と小さな雛人形の数々。ディスクリプションカードを付けて、本日、発送したところです。
(学芸員・尾崎織女)
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