「ままごと道具の今昔」展から | 日本玩具博物館

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学芸室から 2007.03.26

「ままごと道具の今昔」展から

今、1号館では「ままごと道具の今昔」と題する企画展を開催中です。桃の節句に飾られたハレの日の台所道具や食器、また普段使いのままごと道具を時代ごとに展示しています。

昭和40年代のままごと道具のコーナーでは、展示品を指差しながら、懐かしい目をして、小さく歌を口ずさむ方もあります。♪ママ~レンジ、ママレンジ、エプロンつけて~クッキング……。

ママ・レンジ(昭和43年発売)

これは、昭和43年にアサヒ玩具という玩具会社が食品会社とタイアップして開発したままごと道具「ママ・レンジ」のコマーシャルソングです。この頃に少女時代を過ごした世代にとって、これが特に印象深いものとなっているのは、家庭用電源を使用して、例えば本物のホットケーキやお好み焼きが調理できたからです。けれども玩具にしては高価であり、また、それまでのままごと遊びの常識を覆すものであったために、欲しくても買ってはもらえず、コマーシャルの中、楽しそうにホットケーキを調理する少女の姿に、羨望を抱いたりもしたわけです。ママ・レンジ以降、昭和50年代にかけて、ママ・クッキー、ママ・ナガシ、ママ・ポット、ママ・ミラー、ママ・ポップコーンなど、本物シリーズが相次いで販売され、物質的に豊かな時代の象徴ともなりました。

ママ・シリーズ…展示前の展示品チェックの様子
展示風景「昭和40~50年代」

それまでのままごと遊びにおいて、ホットケーキもお好み焼きも想像の中に存在するか、あるいは、草や花びらを混ぜた土饅頭だったでしょう。季節は春、ままごとセットが手元にあるなら、それらを外に持って行き、田の畦に座って友達を誘います。菜の花やカラスノエンドウ、レンゲソウ、イタドリ、タンポポなどを小さな包丁で刻むと、小さなフライパンにのせて、これまた小さな電熱器の上で調理するのです。市販のままごと道具がなくても大丈夫。まな板も鍋も皿も、田の畦にあれば、なんでも用意することが出来ました。そんな楽しい思い出は、世代共通のものかもしれません。私にしても、少女時代の春を思い起こせば、お椀見立ての大根の葉の中に、オオヌノフグリの花が輝いていたことや幼馴染の笑い声がよみがえります。

草花を使ってままごと遊びをする姉妹

土や陶器、木、竹など本物の道具の素材そのままに作られていた明治・大正時代、やがて、ブリキやアルミ、セルロイドなどの工業製品が加わりますが、ままごと道具の世界に、プラスチック製品が登場するのは昭和27~8年頃のことです。初期のプラスチック製ままごとセットのパッケージには、「美しい もえない こわれない」と誇らしげに連呼されます。水に当たると錆びてしまうブリキに対して美しい。引火性の強いセルロイドに対してもえない。欠けやすい陶器に対してこわれない……ということでしょうか。実際、色とりどり、鮮やかなプラスチック玩具は、安物製品の代表ではなく、ハイカラで素敵なものの象徴として時代の歓迎を受けました。展示室でも、プラスチック玩具の登場によって、それまでのダークトーンは一気に変換します。土間の台所をピカピカのシステムキッチンにリフォームしたみたいに。

展示風景「明治~大正時代」
展示風景「昭和20~30年代」
昭和27年ごろに登場したプラスチック製ままごと道具

けれど、物が豊かになることで、たくさんの商品玩具が登場することで、子ども達の想像力や美意識が豊かになったかどうか、また、友人たちと触れ合う時間が豊かになったかどうか…、展示室のままごと道具に見入りながら考えます・・・・・・。「ままごと道具の今昔」は、特に女性にとって幼い日の思い出につながる玩具と再会し、時代の移り変わりを通して、遊びにとって大切なものについても感じていただける企画展だと思っています。ご来館、お待ちしております。

(学芸員・尾崎織女)


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