子どもたちの博物館体験 | 日本玩具博物館

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学芸室から 2019.06.30

子どもたちの博物館体験

梅雨入りとともに湿度がぐんぐんと上がり、今年も暑そうな夏がすぐそこまで来ています。
6月のはじめ、今年もトライやるウィークで香寺中学校から2名の生徒さんが仕事体験に来てくれました。受付、ミュージアムショップ業務、ちりめん細工の正絹の梱包、発送に学芸の仕事と、短い時間の中でそれぞれの仕事を少しずつ体験してもらっています。毎年体験内容は大きくは変わらないのですが、今年は資料カードづくりと展示替えのお手伝いもお願いしました!
博物館に収蔵された資料は、ひとつひとつ資料情報を記録します。この資料カードの作成と整理は、博物館の基盤となる仕事です。生徒さんには先日寄贈を受けた郷土玩具の中から1点と、世界の民族玩具のコーナーから気に入ったものを1点の資料カードを作成してもらいました。名前や時代、その資料の背景も文献から調べていると、あっという間に午前中が終わり、二人ともびっくりしていましたが午後も手描きのスケッチまで取り組んでくれて丁寧な資料カードを作成してくれました。1点1点向き合ってくれた資料のことは、きっとこの先も覚えてくれているのではないでしょうか。


そして、2号館のコーナーのひとつ「ままごと道具」を夏秋の特別陳列として「太平洋戦争とおもちゃ」へと展示を替えました。太平洋戦争から今年で74年が経ちますが、現在も世界では、戦争、内戦、紛争が絶えません。また、日本を含め、戦争を発端とする国や地域同士の複雑な関係性が報道されることも多くなっています。太平洋戦争が子どもたちの世界に与えた影響を玩具を通じて振り返り、改めて今とこれからの世界、そして平和について考える機会となればと思い、このテーマを取り上げました。
生徒さんには解説やキャプションをパネルに貼って切る作業から手伝ってもらいました。地味な作業なうえ、慣れないカッターでかなり苦戦していましたが^^;キャプションは展示にはかかせないものですし、展示準備も体験してもらえてよかったです。

さていよいよ展示替え。ままごと道具をおろし、梱包し、展示ケース、ガラスを掃除し、資料を開梱し、展示しながら全体を整える。そしてパネル、キャプションを置いて完成です。こう書くと2行ですが、約4mの展示ケースだけでも4人で1日がかりの作業です。ひとつひとつ形と大きさの違う玩具資料は、梱包にも展示にも集中力と頭を使いますが、2人とも丁寧に根気よく取り組んでくれました。戦時中の玩具ということもあり、材料統制で金属類が禁止され、「日本玩具人形類統制協会」の検閲を受けたシールが貼られたものや、「愛国郵便車」と書かれた貯金箱には昭和十年代の一銭や十銭が入れられているものもあります。当時の子どもたちの生活を想像しつつ、直接資料に触れながら、肌で玩具が持つ時代性も知ってもらえたのではないかなと思います。終業時間までには終わりませんでしたが、トライやるウィーク後に改めて完成した展示を見にきてくれたのは、とても嬉しかったです。

2号館が昭和の玩具史になり、1号館の平成の玩具から時代を遡っていくような展示空間になったと思います。お越しの際にはどうぞご覧くださいませ。


6月は小さな来館者もたくさんお迎えしました。姫路市内の幼稚園の子どもたちです。おもちゃづくりと見学のプログラムで遠足に来てくれています。おもちゃづくりは、よくまわる折り紙の2枚羽根の風車(かざぐるま)です。郷土玩具に残された、江戸時代から遊ばれていた竹と和紙で作られた風車を見せたり、中世ヨーロッパの子どもたちが遊んだ軸の長い風車のお話で風車の世界へ誘いながらおもちゃづくりのスタートです。最初はわくわくとできるかなの顔もだんだん形が出来上がってくると笑顔になっていきます。完成するとどの子もみんなですぐに風車を持って嬉しそうに走り回り、回ったよ!と誇らしそうに報告してくれる顔がとてもかわいらしいです。一生懸命遊んで、おもちゃを手作りして、館内のいろんなおもちゃへの興味と疑問をたくさん持って帰ってくれていると嬉しいです。

(学芸員・原田悠里)

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