日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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展示・イベント案内

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館外展

韓国全州市ハンソル紙博物館「アジアの紙人形展」

会期
2000年10月26日(木) 2001年3月31日(土)
会場
大韓民国全州市ハンソル(現・パナシア)紙博物館

2000年4月19日、私達はハンソル(Hansol)文化財団の事業部長とハンソル紙博物館の学芸員らの訪問を受けました。ハンソルは、韓国の大企業体・サムソン(Samsung)グループより独立し、製紙業を中心に幅広い事業を展開する企業で、1997年、文化事業の一環として全州工場の一角に「紙博物館」を開設されています。
開館三周年を迎える今年、ワールドカップの日韓共同開催や市民レベルでの文化交流が活発化している現状を踏まえ、ハンソル紙博物館は、日本のいずれかの博物館が有する紙文化に関する資料によって特別展を開くことを計画。ハンソル紙博物館の立ち上げに力を尽くされた文化環境研究所の高橋信裕氏の仲立ちによって、当館が所蔵する張り子玩具や紙人形による特別展を開催する方向で動き始めました。


日本玩具博物館の海外展

当館では、過去約10年間に5回、所蔵資料による海外展を経験しています。
1回目はベルギー・ブリュッセルで行われたユーロパリア・ジャパンに関連した「日本の伝承玩具展」(1989年)、2回目はアメリカ合衆国・シアトルの桜祭協会が主催した「日本の暮らしと遊び展」(1993年)、3回目はスイス・チューリッヒ玩具博物館からの依頼で行った「日本の郷土玩具展」(1993年)、4回目は日伯修好100周年記念事業委員会からの要請でブラジルの三都市、サンパウロ・クリチーバ・リオデジャネイロを巡回させた「日本伝統玩具展」(1995年)、5回目は中国の上海児童博物館との交流の一環として同館と共催した「世界の玩具展」(1998年)で、今回、6度目を数えます。


「アジアの紙人形展」までの経緯

当館の資料による特別展開催の決定を知らされたのは6月23日。「世界の紙人形」とタイトルし、人形の表情や衣装などによって世界各地の子ども達の様子を紹介したいという希望が添えられていましたが、紙製の人形や玩具を探して世界を見渡した時、ヨーロッパやアフリカの国々にはほとんど伝承資料が残されていないし、実際に当館のコレクションにおいても、紙製人形の産地の多くがアジアでです。そうしたことから、アジアの張り子や紙製玩具を種類別、地域別に紹介する展示へと内容の変更をお願いしました。

7月19日、紙博物館の学芸員が再び来館し、インド、ミャンマー、タイ、中国、スリランカ、ベトナム、日本などの凧や仮面、張り子の動物玩具や紙塑人形など、ずらりと実物資料を並べて展覧会のコンセプトについての話し合いをもちました。

ハンソル紙博物館の学芸員氏らの訪問。展覧会の内容や出品する資料選定について、実物資料を前に話し合いました。

その後、私たちは、展示品の選定と撮影、梱包と箱詰、コンディションカードの作成、展示品リストやインボイスの作成、損害保険や運送業者の手配、通関や送付に関する手続きなどを2週間で済ませ、9月8日、約250点の玩具資料が紙博物館地階の収蔵庫へ到着しました。
同日、資料開梱立ち合いのため、当館より尾崎学芸員が全州を訪問すると、会場デザイナー、ディスプレイ担当者、印刷物デザイナー、映像制作担当者らもソウルから到着していて、開梱された250点の資料を囲んで、紙博物館の学芸員・金重泰氏を中心に、具体的に何をどうグルーピングするか、どう観せたいかについて、イメージを広げるための計8人による‘資料観察会’が開かれました。
当館からは、「祈りの造形としての紙人形」をテーマに、祭礼に因むもの、遊戯性の高いもの、工芸的な作品など、紙人形の性格に焦点をあてた展示構成するのはどうかと提案しましたが、最終的には「紙に託した子どもの夢と希望」という展覧会テーマが決まりました。

展覧会パンフレットの表紙


全州工業団地の中でひときわ広い敷地を有するハンソル製紙工場、その一角に建てられた4階建ての紙博物館は、1階が韓紙作りの体験室、2階が6つのテーマによる世界の紙と韓紙にまつわる常設展示室で、162㎡ほどの特別展示室は常設展と同じ2階に設けられています。

10月26日、「アジアの紙人形展」の開会式には、文化環境研究所の高橋信裕氏とともに当館の井上館長と尾崎学芸員が紙博物館を訪問しました。子どもの世界を表現した映像による導入部、地域ごとに紙人形の造形的なおもしろさを見せる展示コーナー、祭礼に因む紙人形や張り子面を各地から集めて展示するコーナー、韓国における紙工芸作家による紙人形を展示するコーナー、韓国内の折り紙協会の協力を得たワークショップ「ガリバー旅行記の世界を作る」コーナーなど、よく吟味された会場構成となっています。
秋から来年の春へ―――全州の地で当館の玩具や人形たちがどのような出会いを果たすのか、とても楽しみです。


  会期=2000年10月26日~2001年3月31日
  会場=ハンソル紙博物館(大韓民国全州市)
  主催=ハンソル紙博物館(大韓民国全州市)
  企画出品協力=日本玩具博物館

展覧会図録の解説もご協力しました


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◆2000年の館外展  
富山県こどもみらい館「子育ての祈りと願い―伝承玩具展」
三重県立みえこどもの城「おもちゃののりもの2000年ツアー」
韓国全州市ハンソル紙博物館「アジアの紙人形展」

◆2001年の館外展
富山県こどもみらい館「日本のままごと道具の変遷」
明石市立文化博物館「世界のおもしろ玩具展」