「世界のクリスマス~冬の祭礼と造形~」 | 日本玩具博物館

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特別展

開館30周年記念◇冬の特別展 「世界のクリスマス~冬の祭礼と造形~」

会期
2004年10月23日(土) 2005年1月25日(火)
会場
6号館
世界のクリスマス展2004

クリスマスはキリストの誕生を祝う行事ですが、そこに表われる造形を見ると、ヨーロッパが古くから伝えてきた民俗的な祭の心が深く溶け合っていることがわかります。古代ヨーロッパでは、太陽が力を失い、地上の生命力が衰えた冬枯れの季節に、暖かい光の復活を願い、新しい年の豊作を祈る祭を行っていました。これは冬至祭や収穫祭として今も各地に伝えられていますが、キリスト降誕の祝日は、こうした土着の信仰をとり込むことをよって大きな行事へと発展していったものと思われます。             

アドベントカレンダー(待降節のカレンダー)展示コーナー

当館がクリスマス展を開催するようになって本年で20年目を迎えますが、資料や展示内容も回を追って充実し、この季節の恒例展として親しまれるまでになりました。当館のクリスマス展は、各地の人形や玩具、オーナメント(=装飾)を通してクリスマスの意味を探る試みです。本年は、ツリー飾り、サンタクロース、キリスト降誕人形、キャンドルスタンドなどのクリスマス造形の中に、「収穫感謝の心」「光の復活を祝う心」「豊かさを祈る心」「生命を慈しむ心」――これら4つの意味を求めます。

世界45カ国の1000点に及ぶクリスマス飾りが一堂に。中でもヨーロッパの資料を中心に展示し、本場のクリスマス飾りの様子を「北欧」「中欧」「東欧」「南欧」と、地域ごとにご紹介します。太陽の光が弱くなる冬のさなかに祝われるクリスマスの心を、私たちのコレクションが物語ってくれれば幸いです。

展示総数 世界45ヶ国から1,000点


【キリスト降誕の人形~生命をいつくしむ心~】

キリスト降誕人形は、中世の宗教熱の中でイタリアで作られ始めた箱庭ふうの人形です。馬小屋の飼葉桶に誕生したイエス、見守るマリアとヨゼフ、誕生の知らせを聞いてかつけた羊飼い、東方から捧げ物を持ってやってきた三人の博士など、キリスト降誕の物語を人形によって表わしていくものです。人形には作る民族の表情がよく映されています。それぞれの箱庭の世界では、一つの健やかな生命が、立派な城の黄金のベッドではなく、世界の片隅ともいえるつつましい場所に誕生し、裕福ではない人々と賢い人々と物言えぬ動物達に祝福されています。それぞれの人形たちの表情には、生命の尊厳が表現されていると思われます。


【光の造形とキャンドルスタンド~光の復活を祝う心~】

北半球において12月21~22日といえば、太陽の照る時間が一年で最も短い冬至にあたります。冬至に向かって太陽の光は弱くなり、この日を過ぎると、春に向かって日照時間はどんどんとのびていきます。この世に光をもたらす救世主と信じられるキリストの誕生日は、冬至を過ぎて再生した太陽を祝い、春への期待をふくらませる祝日でもあったわけです。クリスマス飾りの中には光を象徴するものが目立ちます。このコーナーでは、各地で作られる光の造形を展示します。
クリスマスに登場するキャンドルスタンドやホールダーには光をより美しく温かく見せる工夫が凝らされています。鉱山職人の手によって生まれたドイツ・エルツ地方の「光のピラミッド」と呼ばれるキャンドルスタンドや、生命樹をあしらったメキシコの民族色豊かなキャンドルホールダーなどが見どころです。


【自然素材のツリー飾り~収穫感謝の心~】

クリスマスツリー飾られるオーナメントを見ると、チェコの小麦パンの飾り、北欧や中欧各地の麦わらの飾り、ハンガリーなどのきびがら(トウモロコシの皮)の飾りなど、収穫された穀物を象徴する素材によるオーナメントが、各地で作られていることに気付きます。これらの造形には、一年の実りを感謝し、来る年の豊かであることを願う心がこめられたものと考えられます。

ツリー飾り・麦わら細工のオーナメント(チェコ/1990年代)


【サンタクロース~豊かさを祈る心~】

サンタクロースは、紀元280年頃、今のトルコに生まれ、のちにキリスト教の司教となった聖ニコラウス(セント・ニコラウス=オランダ語でシンタクラウス=英語でサンタ・クロース)がモデルです。情け深く、貧しい人々を救け、子どもを可愛がったので、子どもや弱者を守る聖人として敬われました。この聖ニコラウスが貧しい人々に贈り物をしたり、困っている人に金貨を授けたりしたという伝説と、古い時代より伝わる冬至祭に新年の豊かさを祈って、人々が贈り物を交換していた習慣が溶け合って、クリスマスにプレゼントを運ぶサンタクロースの物語が誕生したといわれています。
国によってサンタクロースのイメージの様々。ドイツやオーストリアのサンタクロース(ニコラウス)には、生命の死と再生を司る来訪神のイメージがあり、北欧のサンタクロース(ニッセあるいはトムテ)は、森に住む妖精で、人々に豊穣をもたらす自然神のイメージがあります。トナカイのひく橇にのった明るくやさしいサンタのイメージは、19世紀にアメリカで形成され、日本のサンタに影響を与えました。


【ヨーロッパのクリスマス】

【北ヨーロッパのクリスマス】………冬の間はほとんど陽がのぼらず、雪や氷に閉ざされる北欧にあっては、太陽の復活を願う古い民俗信仰とキリスト教がとけあった「ユール」と呼ばれる独特のクリスマスが祝われます。暗く厳しい冬、人々は窓辺にキャンドルを点し、清らかな行事の雰囲気を盛り上げて行きます。手工芸が発達した国々とあって、切紙細工や麦わら細工のクリスマス飾りが町中にあふれ、トムテやニッセという名の妖精たちが山羊を連れて活躍する北欧のクリスマスは、ファンタジックな雰囲気に満ちています。

【東ヨーロッパのクリスマス】………東欧では、冬至祭や収穫祭結びついた民族色豊かなクリスマスが祝われています。チェコやハンガリー、ユーゴスラビアの麦わらやきびがら、木の実細工のツリー飾りには、収穫祭との深い結びつきが感じられます。また、小麦パンをかたく焼き締めて作られるソルト・ドゥのオーナメントやボヘミアグラスのツリー飾りは、伝統工芸の素晴らしさを感じさせる作品です。

【中央ヨーロッパのクリスマス】………ドイツ、オーストリアなど中央ヨーロッパにおいてもクリスマス・アドベント(=待降節)の平均日照時間は1~2時間。冬枯れの町には寂しさを払うようにモミの木の緑とキャンドルの光があふれます。町の広場にはクリスマス飾りを売るマーケットがたち並び、キャンドルスタンドや煙だし人形、細工をこらしたオーナメントが人々を温かく出迎えます。きらきら輝く麦わらの窓飾りや経木のツリー飾りは「光」をイメージしたものです。

【南ヨーロッパのクリスマス】………イタリアをはじめとする南欧のクリスマスには、サトゥルナーリアと呼ばれる賑やかな収穫祭の香りが残されているといいます。また、カトリックが力をもつイタリアは、キリスト降誕人形の発祥した地であり、教育的な意味の加わったクリスマス玩具の色々を見ることができます。


<会期中の催事>
解説会
  日時=11月23日(火/祝)・28日(日)・12月5日(日)・12日(日)・19日(日)・23日(木/祝) 
     ※各回 14:00~ 45分程度
ワークショップ1 クリスマス飾り*デンマークの切り紙細工「ユールヤータ」「小鳥」「リングのモビール」
  日時=12月5日(日) 10:00~12:00
ワークショップ2 クリスマス飾り*麦わら細工の天使
  日時=12月7日(日)  13:30~15:00


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次の特別展 → 春の特別展*2005「江戸から昭和のお雛さま」