日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ Toys of this month

2021年1月

「竹鳴り独楽」

  • 1960~90年代
  • 日本とアジア各地/竹

現存する古文献のなか、独楽について書かれたものに、平安中期の『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』があり、そこには、当時の名前と形について、こう記されています。―――独楽(こま)の和名は≪古末都玖利(こまつくり)≫いい、孔が開いたものである————と。残念ながら『和名類聚抄』にいう≪古末都久利≫は、その実物も絵図も遺されていませんが、上下を板でふさいだ竹筒に穴を開け、長い心棒を刺しただけの素朴な造形ではなかったかと考えられています。

その形については、江戸時代後期、京阪地方の祭礼で売られた竹独楽、また江戸の庶民には「唐独楽」とか「ごんごん独楽」とか呼ばれてで親しまれた竹鳴り独楽が推測の手掛かりとなっています。「唐」と冠されるところには、江戸庶民がこの竹鳴り独楽は大陸から伝わったと認識していたことの表れでしょうか。

江戸後期の文献『江都二色』や『守貞謾稿』に描かれた「唐独楽」や「ごんごん独楽」と同型の独楽は、宮崎市佐土原町をはじめ、大分県臼杵市や大阪市、愛知県西尾市をはじめ、日本各地に伝承されています。

日本各地に伝承される竹鳴り独楽(左から宮崎県宮崎市の神代独楽・愛知県西尾市の竹鳴り独楽・大分県臼杵市の竹鳴り独楽)

また、興味深いことに、竹鳴り独楽は、中国や台湾、タイ、ラオス、インドネシアなど、アジアの国々でも、広く遊ばれてきました。いずれも心棒上方に糸を巻き、糸端に通した竹片を持って糸を引くと、回転とともに孔に風が吹き込んで、う~んと、うなり声を立てます。中国大陸から東へ西へ、南へ北へと目に見えない伝播のルートをたどってアジア各地に花開いたものでしょうか。それとも、竹の生育する土地それぞれに自然と誕生し、せ~の!で、竹鳴り独楽を出し合ったら、見事、同じ形になっていた!ということでしょうか。

アジアと日本の竹鳴り独楽
インドネシア・ジャワ島の竹鳴り独楽 ・・・う~ん……♪♪という音が聞こえますか?

日本玩具博物館のプレイコーナーには、三重県伊勢市の土産として親しまれてきた竹鳴り独楽を設置しているのですが、その鳴り独楽をうまく回そうとして何時間も格闘していた小学生があるとき、神妙な顔で話してくれました。

三重県伊勢市の竹鳴り独楽を回す子どもたち

「低い音、太い音、かすれた音…。どんな音が鳴るかで昔は何かを占っていたのかな。糸を引いて回すときには、もう本当にドキドキする!」と。――そうかもしれません。鳴り独楽は、単に遊戯の道具ではなく、占いやまじないの道具であったという説もあります。かつて世界には独楽の鳴る音を神様の声になぞらえる人々があり、その音に魔物を払う力がこもると信じる地域もあったといわれています。当館をお訪ねになられたら、プレイコーナーの鳴り独楽を手にとって、ぜひ、回してみてください。回転とともに低くうなる音の不思議な力を感じていただけることと想います。

竹鳴り独楽は、6号館西室の常設展「正月の玩具と節句の人形飾り」でご紹介しています。(尾崎織女)