日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ Toys of this month

2020年6月

「カッコウ笛」

  • 1980年代
  • ドイツ各地(ディーブルク・オーデンヴァルト・ヴュルツブルグ)/陶器
ドイツ各地のカッコウ笛

日本では江戸時代より鳩やフクロウをかたどった土笛が数多く作られ、各地の子どもたちに愛されてきました。そうした故郷の鳥笛は郷土玩具として今に伝わっていますが、いずれもホウホウ、ポウポウと、ひとつの音をのどかに奏でるものばかりです。ところが、世界から鳥笛を集めてみると、鳥たちの背や胸にいくつかの指孔が作られ、オカリナのように旋律を奏するものが数多く見られるのです。

日本の郷土玩具の土笛(佐賀県弓野/青森県下川原/福岡県津屋崎/福岡県古博多)――吹き口はすべて尾羽に作られ、指孔はありません
世界の鳥笛のいろいろ(フランスのカッコウ笛・スウェーデンのオカリナ・メキシコのオカリナ・フィンランドの鶏型二音笛・ペルーのオカリナ) ――吹き口はいろいろ、いくつかの指孔が作られています

医学者の角田忠信氏(※注)によると、鳥のさえずりを「声」といい、言語を司る左脳でとらえる日本人に対して、ヨーロッパなどでは、音楽を司る右脳がメロディーとして聴くのだといいます。 だから、彼の地の鳥笛には指孔があって、楽器を志向するものが多く伝えられているのかもしれない――そんなふうに考えてみたりするのですが、いかがでしょうか。

 (注)『日本人の脳』角田忠信著/1978・1985年刊

ドイツのカッコウ笛(ディーブルク郊外、オーデンヴァルト地方、ヴュルツブルグ郊外)

ドイツではオカリナ型の鳥笛に加えて、指孔がひとつだけもうけられた「カッコウ笛」が多く作られてきました。それぞれにディーブルク郊外、オーデンヴァルト地方、ヴュルツブルグ郊外で焼かれたこれらのカッコウ笛は、20年ほど前、ドイツ在住の鳥笛収集家から日本玩具博物館へ贈られた陶器の名品です。
三者三様に窯の特徴を表す文様が面白く、ヴュルツブルクのカッコウ笛など、まるで水差しの持ち柄のような尾羽の形がユニークです。胸部の指孔を開閉しながら、尾羽や笛底に作られた吹き口から息を送ると、穏やかでやさしく、そしてどこか哀愁を帯びた中音で、カッコウ、カッコウ、カッコウと、二度あるいは三度の音程を奏でます。

日本でカッコウといえば、5月頃に渡ってくる夏鳥ですが、ドイツでは春を告げる使者とされ、“カッコウが鳴く時が春の始まり”と考えられてきたそうです。「♪カッコウ Kuckuck, Kuckuck, ruft’s aus dem Wald」は、ドイツ語圏で広く知られている童謡で、こんなふうに歌われます。
     カッコウ カッコウ 森から呼ぶ声
     歌おう 踊ろう 飛び跳ねよう
     春は 春はもうすぐそこ ・・・・・・
昔のドイツでは、どんなときにカッコウの初音を聴いたか、カッコウが何回鳴いたかによって、結婚や子宝、寿命の占いなども行われていたのだとか。

特別の意味を帯びた鳴き声であるからこそ、♪カッコウ、カッコウ・・・と情感豊かに響く二音の鳥笛が愛着をもって親しまれてきたのでしょう。(Osaki)