日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ Toys of this month

2020年8月

「シュコー社のゼンマイ仕掛けの動物――made in US zone Germany」

  • 1945~49年
  • 連合軍軍政期のドイツ(バイエルン州)/金属・布

数年前の晩秋のこと、あるご婦人が古びた動物玩具の寄贈をお受けしました―――「これらは子ども時代に祖母から譲り受けたものです。何度もゼンマイを巻いて動かしたため、仕掛けは壊れているけれど、ぜひ、遺してほしいのです。」とおっしゃいます。


「一見してドイツ製に見えますね…」と、そっと手にとり、黒い犬をひっくり返してみると、玩具底の鋼に「MADE IN U.S. ZONE GERMANY, Schuco」とあります。1945年、ドイツは、日本と同じく第二次世界大戦に敗戦し、1949年までの4年間にわたり、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ソ連の4か国によって、国土を分割統治されていました。
ひとつの国家として主権回復がなされることを前提とした分割統治でしたが、民主化と自由主義経済によって復興を目指す米英仏の西側陣営と、社会主義化を求めるソ連側との対立がドイツにおいて表面化します。1949年、西側管理地域にドイツ連邦共和国が、ソ連管理地域にドイツ民主共和国が成立し、1990年の東西統一まで41年に亘る一国分断の悲しい歴史が始まったのです。

“MADE IN US ZONE GERMANY Schuco PATENT”--この表記によって、この玩具は、1945年から49年にかけて、アメリカ合衆国によって管理されていた地域(バイエルン州やヘッセン州、バーデン=ヴュルテンベルク州北部)で、シュコー(シュコ)社が製造したものであり、輸出用であったこともわかります。
シュコー(Schuco)といえば、1912年創業。ドイツでも指折りの玩具メーカーで、バイエルン州ニュルンベルクが誕生の地。現在は、 ジンバ・ディキー(Simba Dickie)グループの傘下に入っていますが、100年以上の歳月、ゼンマイ仕掛けの動物や乗り物、模型、ミニカーなど、数々の良質の玩具を世に送り出してきました。

ゼンマイを巻くと、黒い犬は前脚を交互に動かしながらひょっこりひょっこり前進し、ネズミは手にもつビアマグを上げ下げしながらビールを飲みます。ボディに鋼を用い、起毛布やフェルト布でやわらかく成形した動物玩具は、戦前よりシュコー社の得意とするところで、戦前戦後の日本製玩具にも影響を与えました。日本では1950(昭和25)年にプラスチック(合成樹脂)製玩具の国内製造が始まりましたが、ドイツではそのプラスチックがすでにネズミのビアマグに使用されています。

右側面(画像1枚目)にゼンマイを巻くための軸棒が設けられています
ゼンマイの軸棒はネズミの背面にあります


戦後まもなくの大変な時期にありながら、細部にも戦前と変わらぬ堅実丁寧な仕事がなされており、ドイツ玩具メーカーの誇りが伝わってくるようです。また、輸入品を求められたのでしょうか、それとも海外からのお土産だったのでしょうか、お祖母さまがお持ちになられたものを、孫娘に当たるご婦人が受け継いで愛しまれ、長く、大切に手元に置いてこられたことで、古びてなお、小さな動物たちの表情には持ち主に愛された“自信のようなもの”が感じられます。
これらの玩具は、4号館2階の常設展、ドイツのおもちゃのコーナーに展示しておりますので、戦後のドイツに思いをはせながらご覧くだされば幸いです。(Osaki)