「端午の掛け軸飾り」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2006年5月

「端午の掛け軸飾り」

  • 明治末~大正時代
  • 日本/和紙・木

  鯉のぼりが五月の空を泳ぎ始めたのは、今から二百数十年前、江戸時代中ごろのこと。

 中国の有名な故事「龍門伝説」は、すでに江戸の町人にもよく知られ、急流をさかのぼって狭き門をくぐり、立派な龍へと変身する鯉は、立身出世のシンボルと考えられていました。竹バネを利用した「鯉の滝のぼり」という名のカラクリ玩具が江戸っ子たちの人気を集めていたほどです。

 江戸時代に生まれたばかりの鯉のぼりは、黒一匹だけで、50㎝ほどの紙製でした。端午の節句が男児の幸福を願う行事として盛んに祝われるようになるにつれ、鯉はどんどん大型化し、昭和に入って布製が普及する頃には、真鯉に緋鯉、さらに子鯉……と、家族が増えていきます。

 写真は、明治時代末期から大正時代にかけて飾られた端午の掛け軸です。甲冑(かちゅう)飾りや武者人形などとは異なり、場所をとらず、比較的安価なこともあって、庶民の間で人気を呼びますが、昭和も戦後になると、徐々に姿を消していきました。

 画面中央には、白馬に乗った太閤秀吉と加藤清正が勇ましく、下段の兜(かぶと)飾りや菖蒲太刀(しょうぶたち)、具足や軍配などが祝儀の華やかさを伝えています。そして、上段には、富士山を背景に幟がはためく五月の空に、一匹の真鯉が薫風を受けて尾を跳ね上げています。