日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ Toys of this month

2012年3月

雛道具「貝桶と合わせ貝」

  • 明治時代
  • 京阪地方/貝殻・木(黒漆塗金蒔絵)

 雛人形と一緒に飾る雛道具は、江戸時代前期の頃からみられました。貞享5 (1688) 年刊の『日本歳時記』には、お座敷の一角に屏風を立てまわして立ち雛と座り雛を並べ、その前には、三方にのせた菱餅や重箱、瓶子などの諸道具が描かれています。江戸時代はじめの雛飾りは、人形も雛道具も簡素なものであったことがわかります。時代が下ると、大名や武家の婚礼調度を模して小さく作った道具を、町家でも賑やかに飾るようになります。箪笥(たんす)、長持(ながもち)、挟箱(はさみばこ)、鏡台、針箱、化粧道具、懸盤(かけばん)、湯桶、飯桶、菱台、高杯、保貝(ほかい)、杯と杯台、書棚、黒棚、厨子棚…などなど。このような雛道具は黒漆塗り金蒔絵の豪華なものになっていきました。大名家の姫君は、お輿入れの際、婚礼調度の雛形を作り、目録代わりに婚家へ持参することもあったようで、そうした雛形の調度類が雛道具の前身といわれています。

 こうした雛道具の中に、合わせ貝が詰められた貝桶があります。合わせ貝は、「貝合わせ(=貝覆い)」という王朝時代より伝承される遊戯具で、360組の蛤貝の身と蓋を合わせて遊ぶ「貝合わせ」に用いられるものです。貝殻の内側には色絵具や金箔、金泥を用いて、花鳥風月や王朝物語の世界が繊細に描かれ、それぞれの一対は、身と蓋(ふた)に分け、別々の貝桶の中に収められました。実際に遊ばれる合わせ貝は横幅8~9cmの大きな蛤貝が選ばれましたが、雛道具の合わせ貝は3cmほどの小さな蛤貝です。

 写真でご紹介する貝桶と合わせ貝は、明治時代中頃のもので、仙蓼(せんりょう)、椿、れんげ草、撫子(なでしこ)、杜若(かきつばた)、桔梗、女郎花(おみなえし)、紅葉……など、十二か月の花々が色絵具で愛らしく描かれています。これは、現在6号館で開催中の特別展「雛まつり~江戸と明治のお雛さま~」の中でご紹介しています。