「ブリキ細工(オハラタ)のオーナメント」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

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2024年12月

「ブリキ細工(オハラタ)のオーナメント」

  • 1980年代
  • メキシコ・オアハカ州オアハカ/ブリキ(錫鋼板)

メキシコでは、ブリキ(錫で表面処理をした鋼板)を細工した工芸品や生活用品が古くから知られていました。「オハラタ(Hojalata)」と呼ばれ、16世紀、スペイン人がメキシコへ持ち込んだものともいわれています。ブリキは軽く、比較的やわらかな金属板であるため加工に適しており、しかも丈夫で耐久性があることから、鏡立てや写真立て、ランプシェード、小物入れ、また宗教的な装飾品などにも多く用いられてきました。安価でありながら、銀のような輝きが庶民層に愛されたようです。近代に入り、アルミやピューター、さらに合成樹脂(プラスチック)素材の普及にともなって、ブリキ素材の日用品が姿を消していきましたが、1960~70年代には、伝統工芸品として注目され、民芸玩具やクリスマスの装飾品などが世界の民芸愛好家にも知られるようになりました。

ブリキ細工は、オアハカ州オアハカやグアナファト州サン・ミゲル・デ・アジェンデが主要な産地として知られ、当館の世界のクリスマス展でご紹介するのは、1980年代に作られたオアハカの品々です。


オアハカでは、古くから伝わるノミやキリのような道具を用いて丸味や凹凸を作って造形し、ブリキ素材そのままの品と、塗装された品があります。後者は、透明感のあるアニリン染料などを用い、エナメルのようなツヤと輝きが特徴です。

クリスマスツリーにつるすオーナメントには、太陽や星、天使や教会、動物や鳥や魚など、他のキリスト教国にも共通するものが見られるほか、ハートやコラソン(心臓)、ディアブロ(悪魔)やカラベラ(骸骨)など、メキシコならではのユニークな題材が目立ちます。それらは、セマナ・サンタ(聖週間)や死者の日(ディア・デ・ムエルトス)などの祭礼に登場する題材でもあります。

ランプの家の「メキシコのクリスマス」

ブリキ細工(オハラタ)のオーナメントは、現在、5号館の「メキシコのクリスマス」コーナーで紹介しています。メキシコ州メテペックの「生命樹の燭台」やメキシコシティーの「ピニャータ」などと合わせてご覧ください。

(学芸員・尾崎織女)