今月のおもちゃ
Toys of this month
2005年8月
「ポンポン船」
昭和30年代の頃まで、子どもに人気のあった水遊びの玩具といえば、ブリキの金魚や水鉄砲、ショウノウ(樟脳)船と並んで、ポンポン船をあげる人が多いでしょう。ブリキ製の船体にロウソクの火を入れると、ポンポンと音を立てて水面を走ることから「ポンポン船」と呼ばれましたが、昭和初期の頃には、まだ川をのどかに運航していた蒸気船と結びつけて「ポンポン蒸気船」と呼ぶ人もありました。
ポンポン船を夢中で走らせながら、誰でもが発した疑問――いったい、この船はどんな仕組みで水上を進むのでしょうか?船の中には、小さな皿状の密閉された部屋(ボイラー)が設けられ、このボイラーから船尾へと管がのびています。はじめに船尾の管からボイラーに水を送り、ロウソクの火でボイラーを熱します。すると中の水は加熱され、やがて気化し、水蒸気が管から一気に放出されるのです。船はにぎやかな音をたてて水の上を前進します。
この玩具が初めて作られたのは、大正4(1915)年のこと。アルコール焚きの船で、非常に高価だったため、あまり普及しなかったのですが、昭和初期になってロウソクの火で走るポンポン船が十分の一の価格で登場すると、どこの夜店でも売られる人気玩具となりました。
昭和時代の子ども達を科学的な考察へと自然に誘っていたすばらしい発明玩具を、今一度、見直してみたいものです。
現在1号館で開催中の企画展「水遊びと縁日のおもちゃ」でご紹介しています。