今月のおもちゃ
Toys of this month
2005年7月
「ドッケ」
ドイツでは古くから栄えた3つの木製玩具の産地があります。一つ目は、ゾンネベルクを中心とするチュ―リンゲン地方、二つ目はチェコとの国境に近いエルツゲビルゲ地方、そして三つ目がオーストリアと国境を接するドイツ南部のアルプス地方です。
ベルヒテスガーデンは、アルプス地方の中心的な産地で、騎馬笛や馬車の玩具の他、写真に紹介する「ドッケ」が有名です。ドッケは日本のこけしにも似たロクロ細工の木の人形。ヨーロッパの人形にはめずらしく手足が作られていないのは、この人形が赤ん坊を表しているからです。中世から19世紀頃まで、ドイツをはじめ、ヨーロッパの国々では、生まれたばかりの赤ん坊は、手足を胴体にしっかりと固定し、亜麻布ですっぽりと包まれていました。魂が赤ん坊の身体から抜け出してしまうのをふせぐまじないとも考えられています。20世紀初頭、ドイツの子ども達は、ドッケを赤ん坊に見たてて、抱いたり、あやしたりしてごっこ遊びを楽しんでいました。
現在開催中の特別展「ドイツおもちゃ紀行」でご紹介しています。