日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2023年7月

「張り子人形・ルピータ」

  • 1980年代
  • メキシコ・グアナファト州セラヤ市/紙

メキシコ中央部に位置するグアナファト州セラヤ市は張り子面や張り子玩具、また動きのある木製玩具、素朴なブリキ細工などを数多く生み出してきた民芸玩具の産地です。セラヤ張り子を代表する作品に、「ルピータ」という愛称で親しまれる人形があります。これは、20世紀のはじめにヨーロッパから伝えられたポーセリン・ドール(ビスクドール/アンティークドール=頭部、また胴部や手脚などが磁器製の上製人形)の影響を受けて作られ始めた民衆のための人形です。かつては、メキシコシティーでも見られたようですが、現在は、セラヤだけで製作が続けられており、多くのルピータが「セマナ・サンタ(聖週間=復活祭当日に向かう一週間)」に登場するので、春を象徴する郷土人形でもあります。
江戸時代末期から明治時代にかけて、大都市部の裕福な家庭の子女が持ち遊んだ上製の市松人形に対して、地方都市や農村部などでは、張り子や木製の素朴な郷土人形が作られて庶民に愛されたこととよく似ています。



この張り子人形は「ルピータ」と総称されますが、一体一体の人形の腹部には、「Rosa」とか「Nora」といった名前が書かれることが多く、遊び手は友人のようにその名を呼びかけつつ、人形遊びに興じたことでしょう。別作りの手足を紐でつなぎ合わせてあるため、座らせたり、手を動かしたり、何かを持たせたり・・・と様々な動きをとることができます。また、下着姿のルピータには衣装を着せ替えて遊ぶ楽しさもあり、長く、少女たちの間で親しまれ続けてきました。

ルピータたちは、7月8日から開催する夏秋の特別展「メキシコと中南米の民芸玩具展」で展示いたします。

(学芸員・尾崎織女)