「<ワヤン・クリ>の小さな舞台」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2026年6月

「<ワヤン・クリ>の小さな舞台」

  • 1980年代
  • インドネシア・ジャワ島/牛皮・角・木

「ワヤン・クリ(wayang kulit)」は、インドネシアのジャワ島やバリ島に伝わる人形芝居、またその芝居に用いられる影絵人形をさし、ヒンドゥー寺院の祭礼や地域の行事、個人の人生の節目などに上演されてきました。演目には、今も、インド渡来の叙事詩『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』をもとにした物語が多く選ばれています。(2009年、ユネスコの無形文化遺産に登録されました)

白い幕(スクリーン)を貼り、かつてはその後ろ側にヤシ油ランプ(現在では電灯が用いられている)を吊るして、「ダラン」と呼ばれる演者が、登場人物それぞれの台詞を語りながら人形を操りつつ、物語を進めていきます。ジャワ島のダランはジャワ語で、バリ島のダランはバリ語を用いて演じ、それらの言葉を通しても郷土の伝統が受け継がれていくのでしょう。観客は、幕に投影された影絵を前側からはもちろん、後ろ側に回って楽しむことも出来ます。

ジャワ影絵劇の人形「ワヤン・クリ」——光に透かした様子

ワヤン・クリ人形の素材は、水牛や山羊などの皮で人形が細やかに彫られ、細密な模様が着色されていています。人形には水牛の角や竹の操作棒が付けられ、腕や手首などの関節部分を動かせるように作られます。上演時、登場人物の輪郭や透かし模様は幕に映し出されてモノクロに表現されますが、後ろ側に回れば、美しい着色が見えます。現世(幕の前側)ではモノクロに見える世界であっても、あの世(後ろ側)では色の付いた美しい世界が繰り広げられていることを表現していると言われます。

バリ影絵の人形「ワヤン・クリ」の玩具、あるいはバリ島の土産品として作られたもの

高さ44cm、幅53㎝の枠に白い木綿の幕が張られた影絵舞台は、ジャワ島のワヤン・クリをまね、子どもたちの玩具として作られたものです。物語に登場する人間や神、怪物を表す影絵人形が厚めの牛皮から切り出され、人形には角を棒状に削った操作棒が付けられています。遊び手は、白い幕の前で小さな人形を動かしながら、ダランになった気分で物語を楽しむのでしょう。中央に立つ先のとがった団扇のような造形「グヌンガン(gnungan) 」は、山や森、生命樹、火や風、宇宙といった自然界を象徴し、物語の章立てや場面の切り替わりを表すときに登場します。影絵芝居に必要な人形と舞台が丁寧にセットされており、子どもたちに郷土文化を伝えていく役割を担った玩具といえます。

ワヤン・クリの小さな舞台は、4号館2階の常設展「世界のおもちゃ」、アジアの玩具コーナーでご覧いただけます。

(学芸員・尾崎織女)