端午の武者人形「応神天皇と武内宿禰」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

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2014年5月

端午の武者人形「応神天皇と武内宿禰」

  • 大正期
  • 京都府

  江戸中期頃の端午の節句に飾られる武者人形は、歴史上や伝説上の英雄豪傑たちが題材として挙げられます。源義経や弁慶、神功皇后と武内宿禰、太閤秀吉と加藤清正など、歴史物語や芝居に登場する広く庶民に知られた大将と従者の組み合わせが好まれ、また高さも1mを超えるような大型のものも作られました。こうした武者人形は今ではあまり見られなくなりましたが、戦前までの京阪地方では剛健な兜や甲冑より、優美な武者人形を節句飾りの主役に据える家庭の方が多かったようです。

 写真は大正9年作の武者人形「応神天皇と武内宿禰」です。20年ほど前に京都市内の町屋に暮らすご婦人から寄贈を受けたもので、人形の高さは65㎝を超える大型。寄贈者により長年手厚く保管されていたため、今も作られた当時のままのつややかで美しい姿を見ることができます。

 さて、この応神天皇は古くから“武神”として信仰があり、武者人形の題材としても尊ばれてきました。応神天皇の母君である神功皇后は、お腹に亡き夫・仲哀天皇の子どもを身ごもったまま、忠臣・武内宿禰とともに出征します。そしてその戦からの帰り、筑紫で誕生した赤ん坊がのちの応神天皇です。武内宿禰は、五代にもわたり、天皇の側近として国政を支えたとされる伝説的人物で、老臣の姿で表現されます。遠征の最中に強き母から誕生した応神、齢三百歳を超えたとされる武内―――彼らの姿をうつした武者人形には、男児の出世と健康、長命への願いが込められたのでしょう。この武者人形は、現在、6号館で開催中の初夏の特別展「端午の節句~京阪地方の武者飾り~」でご覧いただけます。