「古今雛~江戸型と京阪型~」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

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2014年2月

「古今雛~江戸型と京阪型~」

  • 江戸時代後期
  • 江戸・京阪/練物・木・布・金属

 
 江戸時代の安永の頃(1772~80)、それまでは雛人形と言えば京都製であったのが、京好みを脱した新型雛が登場して江戸の人々に愛好され始めました。根付師でもあった名工・原舟月(二代目)は、江戸好みの雛人形を作って脚光をあびます。人形の顔は面長、両眼には硝子玉や水晶玉をはめ込んで、活き活きとした表情をもっています。衣装には金糸や色糸で華やかな縫い取り(刺繍)がほどこされ、袖には紅綸子が用いられています。こうした様式は「古今雛」と称され、現在に続く雛人形の原型とも考えられます。

 「古今雛」が江戸で大人気を博すると、京阪地方においても同じような様式の雛人形が作られるようになります。けれども、江戸文化に支持された“江戸型”の古今雛と京の文化を受け継ぐ“京阪型”の古今雛との違いは際立っていました。引き目鉤鼻で静かな印象の“京阪型”に対して、“江戸型”は、目も口も大きく開いて華やかな表情をもっています。

 例えば、女雛を例にとって比較してみましょう。江戸型の女雛は袂を低く膝元におさめて袖の中に手を隠した姿で作られます。対して、京阪型の女雛は、袖から両手をのぞかせ、檜扇を広げた姿に作られます。江戸型の衣装には浅葱や江戸紫などの渋い色調が好まれるのに対し、京阪型では緋や萌黄の明るい色調が多用されています。

 地方都市で飾られた「古今雛」は、こうした江戸型や京阪型の雛人形の姿を真似ながら、独自の様式を発展させていったといえます。
 6号館の「雛まつり~江戸の雛・京阪の雛~」では、このような違いに着目しながら、展示していますので、ぜひ、ご来館の上、細見していただきたいと思います。