日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2019年8月

「愛國イロハカルタ」

  • 昭和18(1943)年
  • 日本玩具統制協会製/紙

 昭和10年代、満州事変から日中戦争、太平洋戦争へと日本中が戦争一色になり、子どもの遊びや玩具もその影響をうけるようになります。サーベル、ラッパ、鉄兜(てつかぶと)を身につけた兵隊ごっこが流行し、大砲、軍艦(ぐんかん)、戦車、戦闘機(せんとうき)などの玩具が増え、愛国積み木や愛国貯金箱など、“愛国”という文字が目立つようになります。

 「イセノカミカゼ テキコク コウフク (伊勢の神風 敵国 降伏)」、「ロバタデキク センゾノハナシ (炉端で聞く 先祖の話)」、「「ハイ」デハジマル ゴホウコウ(「はい」で始まるご奉公)」と続く、「愛國イロハカルタ」は、太平洋戦争の戦況が悪化した昭和18年、児童文化の統制と戦争協力を推進するための国の機関であった日本少国民文化協会によって作られ、日本玩具統制協会が発行しました。日本玩具統制協会は、昭和17年以降、金属類の使用が禁止された玩具業界において、玩具の素材査定、振興、資材の配給を行う組織です。当時の玩具の多くには、日本玩具統制協会の査定に合格した証紙が貼られています。愛國イロハカルタの読み札の句は、「次世代の日本を担う少国民の心構えを育て、愛國の念を涵養(かんよう)する」ために公募され、現在の小学校、国民学校の児童らも含め全国から、約26万の応募句があったそうです。

 愛國イロハカルタは、子どもたちに国の政策と戦争に賛成、協力する気持ちを持たせることを意図して作られました。この時代は、子どもの遊びの世界までが政治的に取り込まれていたことがわかります。 「愛國イロハカルタ」は2号館で開催中の夏秋の特別陳列「太平洋戦争とおもちゃ」でご紹介しています。