日本玩具博物館のクリスマス*アドベントが始まりました | 日本玩具博物館

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学芸室から 2021.12.02

日本玩具博物館のクリスマス*アドベントが始まりました

キリスト教世界では、クリスマス前の日曜日より4週間さかのぼった日曜日がクリスマス・アドベント(待降節)の第一主日です。今年は11月28日よりアドベントが始まりました。気温が急降下してひんやりとした季節感のなかで、6号館の「世界のクリスマス展」には来館者のあたたかな声が聞こえています。

ヤギを抱くトムテ(スウェーデン)


昨日は、クリスマスツリーについて取材をお受けすることになったので、始まりのころのモミの木のオーナメントに思いをはせるべく、先のブログでもご紹介した赤い姫リンゴのツリーに、薄くて丸いクッキーのオーナメントを焼いて吊るしました。16世紀から17世紀、アルザス地方やドイツの町々でクリスマスに飾られはじめたモミの木には、木の実やクッキーがつるし飾られましたが、舟田詠子先生のご研究によると、その木の美しさを讃えることより、子どもたちがオーナメントをゆすり落として食べることに意味があったようです。展示品のクッキー(スペキュラティウスやシュプリンゲルレ、パンデピス、ペルニークなど)とともに、焼きたてのスパイスクッキーやリンゴ、麦わら細工のオーナメントを手に取っていただき、美味しそうなクリスマス・ツリーをご覧いただきながら、取材を受けることが出来ました。


同じ日の午後には、神戸市立盲学校高等部の皆さんが当館を訪問して下さいました。高等部の卒業旅行にはいつもの年は県外へ出かけられるところ、このような社会状況のもと、県内の施設を選ばれたそうです。
全盲の生徒さんたちには、言葉による説明とともに展示品の実体に触れていただく必要があります。形、仕組み、それから、つるりとした感じ、とげとげした感じ、ごわごわとした感じ、ひんやりとした感覚、あたたかい感覚、重さ、軽さ、しなやかさ・・・。展示室を回りながら、ケースの中から取り出した特別と思う品々を生徒さんたちに手渡すと、彼、彼女らはさまざまな言葉をつぶやき返してくれます。その声に耳を傾ける得難い時間を過ごさせていただきました。

クリスマス展会場では、エンジェルチャイム(スウェーデン)がとよもす涼やかな音色、オルゴール(ドイツ)のメロディー、キャンドルが燃えるときの香り(スウェーデン)、煙だし人形(ドイツ)の口から吐き出されるお香の香り、そして飾ったばかりのリンゴやクッキーのクリスマス・ツリー、―――品々の手触りと音と香りを通してクリスマスを感じていただこうと思ったのですが、うまく伝えられたかどうか…。博物館の展示がいかに「視覚」に頼っているかをあらためて、かえりみる機会となりました。―――それでも、「ああ、いいにおい~!」「きこえる、ちいさな音、きれい・・・」という言葉がほんとうに嬉しかったです。

キャンドルの明かりに香り、オルゴールのメロディー
キャンドルを立てて火を点すと、三人の天使が鐘を鳴らすキャンドルスタンド、燕尾服の裾を持ち上げると口を大きく開いて胡桃をわる人形、お香を仕込んで口から強い匂いの煙を吐き出させる人形

生徒さん、教職員の皆さま、よい日と選んでご来館下さり、ありがとうございました。

(学芸員・尾崎織女)

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