王朝あそび「貝合わせ」  | 日本玩具博物館

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学芸室から 2012.02.26

王朝あそび「貝合わせ」 

6号館で開催中の特別展「雛まつり~江戸と明治のお雛さま」に加え、昨日より1号館では企画展「季節を彩るちりめん細工」が正式にオープンし、日本玩具博物館は一気に春らしいムードに包まれています。桃の節句も近づいた日曜日、講座室では、「“貝合わせ“を作って遊ぼう!」と題するワークショップを開催しました。

「貝合わせ」は平安時代の貴族社会に発生し、長く受け継がれた王朝遊びのひとつです。平安時代においては、貝殻の形や色合いの美しさや珍しさを愛で、その貝殻を題材にして歌を詠じて優劣を競う遊びでした。それとは別に、一対の貝における身と蓋(ふた)を合わせる遊戯は「貝覆い(かいおおい)」と呼ばれていましたが、時代が下ると、この遊びもまた、「貝合わせ」と考えられるようになりました。貝合わせに使用する貝殻を「合わせ貝」と言います。合わせ貝は、360個もの蛤貝が一セットで、地貝と出貝に分け、それぞれ別の貝桶に収めて保存されます。

江戸時代に遊ばれた「合わせ貝」には大形の蛤貝が用いられ、金箔や蒔絵で美しく装飾されていました。これらを伏せて並べ、多くの中から、もとの一対を探す遊びが「貝合わせ」です。対になる貝を違えないところから夫婦和合の象徴とされました。大名の姫君の婚礼調度の中で、合わせ貝とそれを収めた貝桶は、最も重要な意味を持ち、婚礼行列の際には先頭で運ばれたそうです。婚礼行列が婚家に到着すると、まず初めに貝桶を新婦側から婚家側に引き渡す「貝桶渡し」の儀式が行われたといいます。

今回のワークショップでは、スプレーで金色に着色した貝殻の中に、思い思いの絵を描き、ひと組ができあがったところで、「貝合わせ」の遊びを行いました。

ご遠方よりお越しになられた絵心のある方々、ご近所の子どもたち、ご家族連れでご来館下さった皆さま……大人も子どもも一緒になって、小さな貝殻の中の世界にひととき浸り、それらを使って一緒に遊ぶのはとても楽しい体験だったのではないかと思います。ひとつの出貝と同じ形や模様の貝殻を多くの地貝の中から探し出し、カチリと音がしたとき、そして、一同から讃えてもらえたときには、なんとも言えずうれしいものです。貝殻の絵に夢中になる大人たちを尻目に、子どもたちは、貝合わせの遊びに夢中になってくれました。「今夜はお母さんに蛤のお味噌汁つくってもらって、小さな貝にたくさん絵を描く!」――小学校3年生の女の子がそんなふうに言いながら、ポケットに一対の蛤を入れて笑いました。
そして―――「トランプの神経衰弱とよく似てると思ってたけれど、陰陽の観念に支えられた東洋的な遊戯なんだとよくわかりました。」
―――ご遠方からのご参加者が、本日のワークショップをそんな言葉で締めくくって下さいました。本日の様子を画像で少しご紹介します。

(学芸員・尾崎織女)

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