日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2014.09.20

姉さま人形の伝承会~姫路の“ぼんちこ”~ 

ただ今、日本玩具博物館1号館で開催中の企画展「日本の人形遊び」では、大正末期から昭和時代に作られた「姉さま」人形を数多く展示しています。江戸の“姉さま”、京都の“おやまさん”、神戸や高砂の“おかたさん”、伊丹の“まめちこさん”、鳥取の“ばんばさま”、金沢の“たちこさん”……など、呼び名も様々な各地の姉さま人形は、高度経済成長時代を経てすっかり暮らしの中から消えてしまいましたが、日本女性の手先の器用さや感性の繊細さ、美意識などを今に伝えています。

鶴岡姉さま・松江姉さま・姫路のぼんちこ(昭和初期~30年代)

姫路の“ぼんちこ”は、生成色の和紙をそのままを使った髪型と、目鼻は描かれませんが、綿を含んで健康そうな顔が特徴的。和紙を縮らせて髪を作り、千代紙などで衣装を着せた高さ20cmほどの愛らしい手遊び人形です。髪型には、島田や丸髷、桃われなど、いろいろな種類があり、家庭の年長者に教えてもらいながら、それらを作りあげると、菓子箱をお座敷に見立てて人形ごっこを楽しみました。その様子は今、“リカちゃんハウス”で遊ぶ少女たちのそれと変わらなかったに違いありません。

日本各地の姉さま人形の中には、松江の姉さまや鶴岡の姉さまのように郷土玩具として知られているものもありますが、姫路の姉さま“ぼんちこ”は、あくまでも家庭で作り伝えられ、商品となることはありませんでした。 ぼんちこを作って遊んだ思い出をもつ方は、もう姫路にはほとんどいらっしゃらないのでは・・・と思います。

私は、幸いなことに、18年ほど前に大正5年生まれのご婦人、当館館長の母君である井上ため子さんから作り方を教わりました。四季折々の行事のこと、 暮らしの細々とした楽しみ方についてもたくさんのことを教えて下さった“ため子おばあちゃん”。おばあちゃんが彼岸へと旅立たれた後も、愛らしい手遊び人形の伝 承者を増やしたく思って、機会あるごとにワークショップを開いてきたのですが、今回でぼんちこの伝承会は8回目です。

2003年、地元のミニコミ紙に掲載された”ため子おばあちゃん”と「ぼんちこ」の記事

お茶目なところのあった“ため子おばあちゃん”の思い出をまじえながら、今日は“島田”に結ったぼんちこの作り方を習っていただきました。わが町に伝えられたものを知ることは意義深いことですが、遠く千葉や山口からお越しになられたご参加者には、ご自身が住まわれている地域に伝わる姉さまを見直していく機会にしたいとおっしゃられます。日本髪が身近からすっかり消えてしまった今、髪型を整えていくことは結構、難しい作業なのですが、和気藹藹、ほのぼのとした時間を過ごしたのち、それぞれに個性的なぼんちこが出来上がりました。

菓子箱を畳みの間に見立ててぼんちこ遊び
伝承会参加の皆さんが作られたぼんちこたち

次回、11月1日(土)には、1時から“桃われ”に結ったぼんちこを講習いたします。どうぞふるってご参加くださいませ。明治・大正・昭和と少女たちの暮らしを彩った人形たちとともにお待ちいたしております。

(学芸員・尾崎織女)

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