日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2015.09.21

海外からのお客さま

爽やかな秋晴れに恵まれ、穏やかなお彼岸となりました。館の裏庭には三色の彼岸花が咲き揃い、目に見えないものの訪れをひそやかに告げているようです。皆さまはシルバーウィークをいかがお過ごしでしょうか。玩具博物館は、多くのご家族連れの来館者をお迎えし、プレイコーナーの玉転がしやレールのおもちゃで遊ぶ子ども達の楽しげな声が開け放った窓々から赤とんぼ渡る秋空に響いています。

紅白の彼岸花と黄色い鍾馗水仙

台北藝術大学からのお客さま

秋になって、私たちは海外からのお客さまをお迎えしました。おひとりは、台北藝術大学で博物館学を専攻する大学院の学生さん。彼女の研究テーマは、玩具に表現される大衆の歴史について。それがわかりやすく見られる「ままごと道具」をとり上げたいと調査を申し込んでこられました。台湾には、玩具を広く所蔵する博物館は存在せず、歴史と玩具の関係を紐解いていくために、どうしても日本玩具博物館の所蔵品を熟覧したい…と。その勇気と情熱に感じるものがあったので、収蔵庫からままごとに関する所蔵品をすべて広げ、また私たちの知りうる限りの文献や情報なども提示して、3日間の調査にお付き合いいたしました。とても純粋で優秀な学生さん。若い人の目の輝きに接すると本当に嬉しくなります。
異文化にある彼女の視点によって、玩具博物館のままごと道具コレクションがどのようにとらえられ、どのような研究に結びついていくのか、非常に楽しみです。

 

チェコ国立博物館“ナープルステク・ミュージアム”からのお客さま

また先日は、数年前から交流のあるチェコの首都プラハにある国立博物館“ナープルステク・ミュージアム”の学芸員で、同館が所蔵する日本と韓国のコレクションを担当しておられるトマーシュ・クリーマさんのご訪問を受けていました。館内をひとめぐりご覧いただいた後は、クリーマさんがご興味をもっておられる「神戸人形」について、資料を交え、長時間、お話をしました。
ナープルステク・ミュージアムは、幾人かのチェコ人コレクターから寄贈された様々な日本の生活資料を所蔵しており、中には私たちが知り得なかった明治・大正時代の日本の古玩具が含まれていることは、2012年にご来館下さったエレナ・ガウディコワさんから、既に、教えていただいたことでした(<ブログ「学芸室から2012年7月29日>でご紹介しています)。プラハの町では100年も前から日本文化に親しむ人たちがおられ、また今も、日本の玩具をテーマにした展覧会が人気を博している最中だと伺いました。嬉しいですね!

私たちの展示品に注がれるクリーマさんのまなざしはとても暖かく優しく、また、長く文化財としての価値を与えられてはこなかった玩具資料に対するクリーマさんの感じ方、考え方に深い信頼と共感を抱きました。彼の訪問は、遠い世界に仲間の存在を感じさせる嬉しい出来事。このようなつながりによって、いつかすばらしい何かが生まれたら…と夢が広がります。

玩具博物館の資料を日本国内だけでなく、世界各地の方々が研究資料として活用できるように整えていくことは、私が学芸員として館に着任したときのひとつの目標でしたから、このような方々のご訪問をとても嬉しく思います。けれども、玩具博物館の所蔵資料に様々な専門分野から光があたるべく、我らが90,000点の玩具たちの居場所をもっときちんと整えていくためにはソフト面、ハード面ともに課題が山積みになっていて、将来のことを考えると、頭がくらくらしてきます。それでも、臆せず放り出さず、自身の今、出来る最良のことを少しずつでも進めていきたいと思う秋です。 

(学芸員・尾崎織女)

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