日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2014.01.01

開館40周年を迎えて

新年あけましておめでとうございます。寒い季節になりましたのに、当館の入り口の紅白の椿が新春を祝うかのように咲き始めました。
当館は今年、開館40周年を迎えました。1974年11月10日に新築した自宅の一部を展示場に、わずか47㎡でスタートしたのです。それが思いがけない大発展を遂げ、現在、施設は土蔵造りの6棟700㎡です。開館後、収蔵資料の増加にともなって次々に施設を増築し、1976年に現1号館(76㎡)、77年には300余名のカンパを基に現5号館(ランプの家)、79年に現4号館(143㎡)、87年には私の退職金を基に現3号館(95㎡)、89年に現6号館(180㎡)、92年には 現2号館を拡張すると共に道路側を改修して、現在の様な外観になりました。


資金力もない一個人が施設を拡張できたのは、土地を借用でき、入館者数の増加と銀行から低利で融資を受けることができたからです。開館後、入館者数は増え続けて92~96年ごろには年間入館者数が平均して6万人を超えました。それに兵庫銀行(現みなと銀行)が当館の趣旨をご理解くださり、低利で建築資金を融資くださったことなどから施設を拡張することができたのです。その他にも大勢の皆様のご支援があったからですが、本当にここまで来れたのが夢のようです。
開館した当時、私は日本一といわれる玩具博物館になりたいとの夢を持ちましたが、それが現実のものとなり、規模と内容から日本を代表する玩具博物館になったとおもいます。それは方向性がよかったのと時期にも恵まれ、家族の理解と優秀なスタッフに支えられ、そして皆様のご支援の賜物だと肝に銘じています。

収集方針は子どもや女性のもので評価されずに消えようとしているもので、当館でないと見ることができないコレクション群を構築することでした。特筆すべきことは個人立の当館に、第一級のコレクションがいくつも寄せられたことです。大正~昭和初期の郷土玩具の尾崎清次コレクション、虎の郷土玩具では日本一の長尾善三コレクション、さらに橋本武・川野幸三郎・能勢泰明・田中明・武谷信代ほか、郷土玩具蒐集家として名の通っていた方のコレクションをいくつも受け入れました。また中国民間玩具、リカちゃんやジェニーにかかわる膨大な資料も受け入れました。

さらに寄贈を受け入れるだけでなく、いくつかの分野に的を絞って購入活動を継続しています。昨年は貴重なびん細工や雅楽の五人囃子を含む雛人形セットを購入。年末にはフランスのアルザス地方のクリスマスマーケットを訪ねて資料を収集してきました。世界のクリスマスコレクションもそのひとつですが、当館が35年にわたって収集してきた世界の玩具コレクションは世界でも珍しい内容のコレクションです。いつの日か大きな評価を受ける時が来るのではないかと思うようになりました。

雅楽を演奏する楽人を含む段飾り雛


これまでにも繰り返し申し上げてきましたが、当館の存在がなければこれらの資料の多くは四散していたと思います。本来、文化遺産は社会が守り後世に伝えなければならないものではないでしょうか。
私はこの25日で満75歳の誕生日を迎えます。評価されずに消えようとする子どもや女性にかかわる文化遺産を集大成して後世に伝えることを人生の使命として頑張ってきましたが、一個人の力でこれだけのものを守り伝えるのは限界が来たと思います。社会が当館の資料の価値に気付き、社会の力で守り伝えていただきたいのです。そのためにはどうすればよいのか、模索する日々が続きます。

博物館冬の時代といわれる厳しい時代が続きますが、当館には明るいニュースがいくつかあります。この1月中旬には日本ヴォーグ社から私の監修で『ちりめん細工つるし飾りの基礎2』が出版されます。2年前に出た『ちりめん細工つるし飾りの基礎』の続編です。同書は増刷が続き9刷で63000冊出版され、手芸の世界に大きな影響を及ぼしています。さらに文渓堂からもこの2月に、当館のコレクションを基に尾崎学芸員が執筆した『ままごと道具』が出版されます。今年の夏には小倉城庭園で「ままごと道具展」、来年の春には東京の目黒・雅叙園の有名な「百段雛まつり」に依頼を受け、当館も出品することが決まりました。晴れの舞台での展示は大きな影響があると思います。

例年、年間の企画展・特別展の簡単な案内書を作っていましたが、当館友の会の会員様から運営に役立てて欲しいと多額の資金カンパがあり、それで40周年にふさわしい年間行事を紹介するA4サイズのチラシを1万3千枚製作しました。周辺の宿泊施設や播但連絡道路沿いの竹田城、生野銀山、姫路セントラルパークなどで配布いただき、入館者増につなげたいと考えています。


本年も変わらぬご支援とご指導を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

(館長・井上重義)

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